IDC Japanはが国内法人向け5G関連IT市場の予測と調査結果について説明。2020年3月25日から国内キャリア3社によるサービス提供が順次始まり、期待を集めている5Gだが、国内ITサプライヤーの反応は「推進派」と「静観派」に二分されている状況だという。
IDC Japanは2020年3月30日、オンライン会見を開き、国内法人向け5G関連IT市場の予測と調査結果について説明した。同年3月25日から国内キャリア3社によるサービス提供が順次始まり、期待を集めている5Gだが、国内ITサプライヤーの反応は「推進派」と「静観派」に二分されている状況だという。
同社は2020年3月13日に国内法人向け5G関連IT市場予測を発表。同市場は2026年に規模が1436億円に達し、2020〜2026年の年間平均成長率は198%になると予測している。今回の会見では、同社 コミュニケーションズグループ リサーチマネージャーの小野陽子氏が調査結果から得られた分析内容について報告した。
同調査は、従来の通信関連市場調査で対象としている企業ネットワーク部門(ITネットワークのユーザー企業)だけでなく、5Gの活用で大幅に市場が広がるとされている産業用IoT(モノのインターネット)に関わる機器の提供企業やユーザー企業が含まれている。つまり、5Gキャリアや通信機器ベンダーだけにとどまらない意見収集を行っていることになる。
“次世代移動体通信技術”ということで通信業界を挙げて推進されている印象もある5Gだが、国内ITサプライヤーの反応は「推進派」と「静観派」に2分されているという結果が出た。推進派は、5Gビジネスに直接関与している層で、それが故に5Gを求める先進市場の声も聞こえやすいため、強く推進する立場になっているようだ。一方の静観派は、5Gビジネスに直接関与していない層だ。小野氏は「例えば通信キャリアの中でも、推進派一枚岩ということはない。5Gならではの用途がまだない、電波、コストという3つの課題を指摘するなど見方は冷ややかだ」と語る。
5Gは、「高速大容量」「低遅延」「同時多接続」といった3つの特徴があるが、調査における認知度では「高速大容量」の認知度が最も高かった。一方、5Gで可能になる技術として、ローカル5Gや28GHz帯などミリ波の利用、QoS保証(サービス品質)の保証/ネットワークスライシングの認知度はあまり高くない。
当面の5G活用の方向性でも、既存ネットワークを活用しながら、新規用途や要件として求められる場合に5Gを利用するという回答者が多かった。コスト面の影響が強いこともあってか「5G関連ベンダーも、DX(デジタルトランスフォーメーション)用途で提案していく方針」(小野氏)だという。
また、IoT関連の取り組みに関する回答結果から、多変量解析を用いてその傾向を分類すると「大容量モビリティデバイス活用」「データ活用」「設備管理」「不活発」という4つのクラスターに分けることができた。中でも、5Gへの取り組みに積極的だったのが、IoT取り組み企業の32%を占める「大容量モビリティデバイス活用」と、同17%を占める「データ活用」だった。「大容量モビリティデバイス活用」は、IoTの展開を幅広く進める大企業や情報サービス業が中心で、5G導入の早さで1位、5G導入意向の大きさで2位だった。一方の「データ活用」は、画像や映像、AI(人工知能)の活用を志向する製造業が中心で、5G導入の早さで2位、5G導入意向の大きさで1位だった。小野氏は「これら2つのクラスターが5Gのニーズをけん引している」と説明する。
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