「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

ドライバーがいない完全自動運転車、タイヤの状態は誰が見るのか自動運転技術(2/3 ページ)

» 2020年01月22日 11時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

「タイヤに求められる価値も再定義する必要がある」

 住友ゴム オートモーティブシステム事業部 ソリューションビジネスチーム 課長代理の西本尚弘氏は「来るべきMaaS社会に向けて、自動車業界は100年に1度の大変革が起きている。クルマに求められる価値観が所有から利用へ移行する中、タイヤに求められる価値も再定義する必要がある」と述べる。

 同社は2017年10月の「東京モーターショー2017」で、モノづくりに関わるタイヤの技術開発コンセプトとなる「SMART TYRE CONCEPT」を発表している。しかし「2年後の『東京モーターショー2019』では、従来のものを包含する形でコトづくりにつながるソリューションサービスもSMART TYRE CONCEPTに取り込んだ。CRANTSとの共同開発は、まさにそのソリューションサービスの創出に向けたものだ」(西本氏)。

実証実験に用いているTPMS用センサー 実証実験に用いているTPMS用センサー。無線通信はBLEで行い、ボタン電池で数年間の動作が可能(クリックで拡大)

 なお、CRANTSとの実証実験に用いているTPMS用センサーの無線通信は、TPMSで一般的な数百MHzの帯域のRF信号ではなく、Bluetooth Low Energy(BLE)を用いている。西本氏は「TPMSのRF信号は地域によって利用できる周波数が異なるため、グローバル展開のしやすさに課題がある。BLEであればそういった問題はない。消費電力を抑える工夫も盛り込んでおり、ボタン電池で数年間は動作を続けられる」と話す。

 また、TPMS以外にも、オートモーティブシステム事業部で開発を手掛けている、タイヤの回転で発生する車輪速信号を解析することにより路面の滑りやすさやタイヤにかかる荷重などの情報を検知するタイヤセンシング技術「SENSING CORE」なども組み合わせていく可能性も示唆した。

「SENSING CORE」の概要 「SENSING CORE」の概要 出典:住友ゴム工業

2020年は両者にとって新たな事業展開を迎えるタイミング

 2020年は、CRANTSにとっても、住友ゴムのタイヤ周辺サービスにとっても新たな事業展開を迎えるタイミングになりそうだ。まずCRANTSは、これまで実証実験を積み重ねてきたレベル4自動運転車の技術を用いた路線バスなどの移動サービスの提供を目指すことになる。この移動サービスは、ドライバーが乗車しない完全自動運転車となり、運転状況などを遠隔の自動運転管制所で監視しながら、救急車両への対応をはじめ想定外の事態への対応は自動運転管制所内の遠隔操縦用のコックピットから行う。小木津氏は「当初は走行距離は1〜2km程度、限定的な形での導入になるだろう。移動サービスを提供する地域の警察や住民の理解をいただきながら、サービスを拡充させていきたい」と意気込む。

 住友ゴムも、ソリューションビジネスチームによるタイヤ周辺サービスの提供時期として2020年内を目標としている。まずは、大型トラックなどを所有する運送業者向けのTPMSサービスを提供していきたい考え。CRANTSと共同研究を進めている自動運転車向けのタイヤ周辺サービスについても、CRANTSの取り組みに同期した対応を進める方針である。

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