協働ロボットは、従来の産業用ロボット周辺の領域では補助的役割として用途が見え始めてきたが、本来期待されてきた「新市場でのロボット活用の拡大」という点においてはまだまだである。
実際に、協働ロボット大手のユニバーサルロボットでは国内の販売先は従来の産業用ロボットと同様、自動車や電気・電子産業が大半だという。用途としても組み立てや搬送、品質検査などでこちらも産業用ロボットと同様の用途であり、「もともとロボットを使っていた現場がアドオンで使う」というケースがほとんどである。
協働ロボットは安全性の他、新しい用途開拓のため、従来のロボット技術者に頼らずに現場で作業などが設定できるようなシンプル設定をどのメーカーも強化してきているが、それでもロボットになじみがない製造現場にとってはハードルが高い状況だ。
またどれだけロボットそのものの設定が簡単だったとしても、製造現場は全て異なっており、異なる環境に対応する必要性がある。具体的には、周辺環境の把握を行う「画像を含むセンサー」と、つかむものや作業によって変える必要がある「ハンド(エンドエフェクタ―)」などは、個々の現場で作ったり、設定したりする必要がある。これらへのノウハウの不足や負担が、中小製造業などを含む従来ロボットを使用していない環境では難しいのである。
では、これらの設定やインテグレーション、ハンド開発などを外部のインテグレーターに委託することができるのかというと、国内ではそれも難しい状況がある。国内のロボットシステムインテグレーターは700〜1000社存在するというが、ほとんどが中小企業でさらに利益を出せていないといわれている。さらに人手不足にも悩んでおり、増える案件への対応が難しい状況である(※)。
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こうした状況を課題として捉え政府や業界団体などもさまざまな取り組みを進めている。経済産業省ではロボット革命イニシアティブ協議会などを通じ、ロボットシステムインテグレーターの現状調査や、スキル標準などを整理し、参入企業などがステップアップしやすい環境整備などに取り組んでいる。また、日本ロボット工業会では2018年7月にFA・ロボットシステムインテグレータ協会を設立し、ロボットシステムインテグレーターが抱える業界課題の解決などに乗り出した状況である。一方で、日立製作所やNECなど大手企業がロボットシステムインテグレーターへ参入するような動きも生まれている。
ただ、これらの取り組みが順調に進んだとしても、新たな市場創出に応え得るようなインテグレーター育成は間に合わないのではないかと見ている。そこで重要になるのが、用途に合わせてソリューションとしてパッケージ化し「ロボット単体ではなくソリューションの状態で簡単にインテグレーションできるようにする」ということになるだろう。インテグレーターの手を借りなくても、現場で使えるレベルにどう近づけていくのかというのが、今後の協働ロボットメーカーに求められることだと考える。
こうした動きで注目されるのが、ユニバーサルロボット(UR)の「UR+」である。「UR+」は、関連製品やツールをURの協働ロボットと組み合わせてプラグ&プレイで使用できるプログラムだ。URでは、ロボットアームの仕様やインタフェースをオープンにし、それらに準拠するハンドやカメラ、センサーなどのベンダーが、対応するように開発を行う。それを、ユニバーサルロボットが開発されたものを検証、認証し「UR+」製品としてグローバルで販売するという仕組みだ。
従来URでは「ロボットアームの設定そのものが簡単に行える」ということを特徴として打ち出してきたが、「UR+」に参加する機器が増えてくれば、用途に合わせたソリューションパッケージの形で、機器をそろえて接続するだけですぐに使用できるという状況を作り出すことができる。
製造現場ではロボットの導入に対して何らかの課題解決を期待しており、その課題解決までの負荷をできるだけ小さくすることを求めている。従来型産業用ロボットでは製造ラインに組み込むものになるので、システムインテグレーターへの委託も可能だが、特に協働ロボットでは中小製造業など小規模での導入を考えると、こうした「ソリューションパッケージ」をどう構築するのかというのが大きなポイントとなるだろう。
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