車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第14回では、2019年12月に一般公開されたAUTOSARの最新リリース「R19-11」について紹介する。
2019年11月28日に、AUTOSARの最新リリースとなる「R19-11」がAUTOSAR会員向けに予定通り発行されました。AUTOSARの公式Webサイトでの一般向けの公開が遅れておりましたので、前回の第13回は急きょ内容を変更し、スキルや研修に関する取り組み(教育カリキュラムの共通化)に関して少し述べさせていただきました。ちょうどその掲載当日(2019年12月19日)が、AUTOSAR公式WebサイトでのR19-11の一般公開となったのには苦笑いするしかありませんでしたが、気を取り直し、今回より数回に分けてR19-11の内容をご紹介してまいります。
さて、今回のR19-11は、「minor release」(それ以前のバージョンに対して、ドラフト(draft)部分を除いては原則的に後方互換(backward compatible))です。11個のConceptが導入され、また、Adaptive Platform(AP)の多くの部分で検証作業が完了し、draft状態からreleased状態になりました。また、Classic Platform(CP)でも多くの変更が行われています。
目立つところでは、APのソフトウェアアーキテクチャが変更になりました(図1)。Platform Service FCのSignal to Service MappingはCommunication Managementに吸収され、またDiagnosticsはPlatform Foundation FCに移動されています。
また、CPでも2つのBSWモジュールの追加(BndMおよびBmc)と、1つの削除(LinNm)が行われています。
Foundation(FO)では、Secure Hardware Extensions(SHE)に関する文書群が追加されました。これらは、ドイツの自動車メーカー(Audi、BMW、Daimler、Porsche、VW)による団体であるHerstellerinitiative Software(HIS, 英訳するとOEM Initiative Software)により作成された「HIS SHE仕様書」とそのerrata/amendment(エラッタ/修正)、です。AUTOSARからのリリースは唐突に見えるかもしれませんが、HISは既に活動を終了してWebサイトも閉鎖されており、これらの文書の入手ができなくなって久しかったため、HISメンバー全社の合意のもとに、AUTOSAR仕様書として再度公開することになりました。
なお、バージョンの表記そのものも変わりました。前回までのPlatform Release NumberはRx.y.z形式(例:R4.4.0)でしたが、今回のリリースからRyy-mm形式(例:R19-11)に変更されました。ただ、従来形式がBSW内部バージョン情報として利用されており、単純に切り替えると後方互換性の問題が出てしまいますので、x.y.z形式のInternal Release Number(Internal Version)が新たに導入されました(実は、リリース間際に私が指摘するまで、誰も気付いていなかったようです……)。R19-11では、Internal Release NumberはFO/CP/APのいずれでも4.5.0となります。
次に、今回新たに導入されたConceptの内容をご紹介いたします。
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