デンマークのUniversal Robots(ユニバーサルロボット、以下UR)は2019年12月17日、事業戦略の説明を行い、プロダクトおよびテクノロジーベースでの提案から、ソリューションおよびアプリケーションベースでの提案に大きくかじを切る方針を示した。本稿では会見の内容と、UR社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏へのインタビューの内容を紹介する。
デンマークのUniversal Robots(ユニバーサルロボット、以下UR)は2019年12月17日、事業戦略の説明を行い、プロダクトおよびテクノロジーベースでの提案から、ソリューションおよびアプリケーションベースでの提案に大きくかじを切る方針を示した。本稿では会見の内容と、UR社長のJurgen von Hollen(ユルゲン・フォン・ホーレン)氏へのインタビューの内容を紹介する。
協働ロボットの大手企業であるURは2005年に創業し、2008年に最初の協働ロボット製品を世に送り出した。それ以降、協働ロボットメーカーとして市場開拓を進め、これまでに販売した協働ロボットの数は3万9000台に上る。現在でも協働ロボットの金額シェアで50%以上を占有しているという。
ただ、市場そのものが年平均で50%近い成長を持続すると予測されている中で、競合企業の参入も相次いでいる。「3年前、協働ロボットメーカーは3〜4社程度しか存在しなかったが、現在は約55社が製品を展開している状況だ。競争そのものは『協働ロボット』という分野の認知度を高めるためにポジティブな効果をもたらすと考えているが、今後を見渡した場合、製品単体や技術単体で勝ち抜くのは難しくなるだろうと考えている」とUR社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏は危機感を示す。
そこで、同社が重視しているのが市場開拓に先行して築いたプラットフォームおよびエコシステムを生かした「アプリケーション」提案である。ホーレン氏は「顧客はロボットが欲しいのではなく、製造現場における何らかの課題を解決するソリューションが欲しいと考えている。2018年までは製品の力を示しそれを押し出すプッシュ型の提案を中心としてきたが、2019年以降は顧客や市場の動きを見て、話を聞きながら、どういうソリューションが必要かを考えそれを一緒に解決するプル型の提案を中心としていく」と語っている。
アプリケーション提案を行う上で土台となるのが、関連製品やツールをURの協働ロボットと組み合わせてプラグ&プレイで使用できるプログラム「Universal Robot +(以下、UR+)」である。「UR+」はユニバーサルロボットのロボットアームの仕様やインタフェースをオープンにし、それらに準拠するエンドエフェクター(ハンド)やカメラ、センサーなどの周辺機器をデベロッパーが開発。ユニバーサルロボットが開発されたものを検証、認証し「UR+」製品としてグローバルで販売するという仕組みだ。基本的には「UR+」製品は、URロボットのティーチングペンダントを通して設定できるため、ユーザーやシステムインテグレーターがシステム構築などにかかる費用やコストを削減できるという利点がある。
現在この「UR+」にはグローバルで400社以上が参加。日本企業も2019年8月にキヤノン(※)、同年11月にシナノケンシ(※)が「UR+」への参加を発表するなど、拡大しつつある。加えて、URのディストリビューションパートナーはグローバルで700社以上存在し「合計1100社に及ぶエコシステムを生かし、エンドユーザーのサポートを実現していく」とホーレン氏は語る。
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(※)関連記事:シナノケンシがロボットハンド市場に参入、まずは協働ロボット向けでURと協業
注目するアプリケーションとしては「包装とパレタイジング」「機械加工の支援」「ネジ締め」「重素材のハンドリング」などがあるとしている。「これらの市場は新しい市場ではなく既にアクセスしやすい立ち位置にある。その利点を生かし、エコシステムでの提案を進めていく」とホーレン氏は語っている。
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