NECのローカル5G事業は「総合力」が強み、自社工場への導入も推進製造業IoT

NECがローカル5G事業に本格参入すること発表。企業や自治体向けに、ネットワークインフラからアプリケーションまでをカバーするトータルソリューションの提案を始める。自社施設でローカル5Gを利用するための免許申請を進め、玉川事業所内に開設する「ローカル5Gラボ」で利用する他、甲府とタイの工場などで2020年度以降に導入する計画だ。

» 2019年12月18日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 NECは2019年12月17日、東京都内で会見を開き、ローカル5G事業に本格参入すると発表した。同日から企業や自治体向けに、ネットワークインフラからアプリケーションまでをカバーするトータルソリューションの提案を始める。

NECの吉崎敏文氏 NECの吉崎敏文氏

 また、自社施設でローカル5Gを利用するための免許申請を進めて、玉川事業所(川崎市中原区)内に2020年1月に開設する顧客との協創施設「ローカル5Gラボ」で利用する他、NECプラットフォームズの甲府工場(山梨県甲府市)とタイ工場(パトンタニ県)などに2020年度以降ローカル5Gを導入する計画。ローカル5Gの関連製品やサービスの事業目標として、2023年度までに100以上の企業・団体への納入を掲げる。

 NECは急速に進むデジタル化の波に対応するため、全社のナレッジをデジタルフレームワークとして整備した上で、顧客に向けて価値として届けるためのデジタルプラットフォームを体系化している。このデジタルプラットフォームは、Edge、Network、Infrastructure、Platform、Applicationの5層に分かれるが、NECはこれらのうちNetworkからApplicationまでを1つのアーキテクチャで統合していく方針だ。同社 執行役員の吉崎敏文氏は「これまでバラバラにやっていたものをアーキテクチャとして統合していく。今回発表するローカル5Gはネットワークの層を構成する要素の1つだが、クラウドとネットワークを統合していく上で重要な役割を果たす」と語る。

NECが体形化を進めるデジタルプラットフォーム NECが体形化を進めるデジタルプラットフォーム(クリックで拡大) 出典:NEC

「NEC DX Factory」にもローカル5Gを適用

NECの渡辺望氏 NECの渡辺望氏

 NECは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中で業務プロセスを改善するには、「見える化」「分析」「対処」という実世界とサイバー空間をつなぐサイクルをうまく回す必要があるとみている。

 NEC シニアエグゼクティブの渡辺望氏は「特に、データの収集や対処を担うネットワークは、場所に依存しないワイヤレスが有用だ。超高速大容量、超低遅延、多数同時接続という5Gを、セキュアな専用閉域網、干渉の少ない安定性、柔軟な通信リソース割り当てなどを特徴とする自営網で利用できるローカル5Gは、さまざまな産業の高度化を推進するだろう」と説明する。

5Gの特徴×自営網により業務プロセスの改善を実現 5Gの特徴×自営網により業務プロセスの改善を実現(クリックで拡大) 出典:NEC

 NECはLTEから5Gへの移行期に利用されるNSA(Non Stand Alone)向けの仮想モバイルコアを展開しており、今回の発表に合わせて、5Gの本格的な商用サービスに求められるSA(Stand Alone)向けの5Gコアネットワークの開発と提供も始めた。ローカル5Gの事業者に必要な技術やサービスはそろっており、「オンプレミス型の他にも、初期コストを抑えたスモールスタートや早期立ち上げが可能なクラウド型まで、幅広く対応できる」(渡辺氏)という。

NECのローカル5Gの提供モデル NECのローカル5Gの提供モデル(クリックで拡大) 出典:NEC

 今回の発表では、注力する市場として製造、建設、流通、交通、公共の5分野を挙げた。特に、製造については、「ロボットやAGV活用による作業リモート化・自動化」「ネットワーク無線化による生産設備の配置自由度向上」「大量センサー、カメラ活用による生産性向上」といった用途を挙げ、スマート工場関連の引き合いが強いことを示した。

ロボットやAGV活用による作業リモート化・自動化ネットワーク無線化による生産設備の配置自由度向上大量センサー、カメラ活用による生産性向上 製造分野におけるローカル5Gの用途。「ロボットやAGV活用による作業リモート化・自動化」(左)、「ネットワーク無線化による生産設備の配置自由度向上」(中央)、「大量センサー、カメラ活用による生産性向上」(右)(クリックで拡大) 出典:NEC

 また、三菱電機との間では、工場内と工場間の高度なデータ連携を実現する、ローカル5Gとキャリア5Gを組み合わせたハイブリッド5Gのユースケース検証も行っている。自社工場へのローカル5G導入も積極的に進め、NECプラットフォームズの甲府工場やタイ工場にとどまらず順次展開していく方針。自らモノづくりのデジタライゼーションを推進する。また、ローカル5Gラボを開設する玉川事業所内にある次世代モノづくり共創スペース「NEC DX Factory」にもローカル5Gを適用し、製造業向けへの提案を強化して行く構えだ。

 渡辺氏は、NECのローカル5G事業の強みとして「総合力」を挙げた。「何のためにローカル5Gを導入するのかと言えば、業務プロセスの改善が目的であり、それはNECとしての思いでもある。そのためにはエンドツーエンドのサービス提供が必要であり、そこでNECが持つITやネットワークの技術力、ノウハウ、そして全国規模のエンジニアリングリソースが役立つだろう」(同氏)。

 また、国内のローカル5G市場について「2025年度までの累積で数千億円規模になるとみている。このうち10%のシェアを確保したい。本格的に市場が立ち上がるのは2020年度後半から2021年度前半になるだろう」(渡辺氏)とした。なお、ローカル5Gのコスト目安として、1プロジェクト当たり数千万〜数億円の投資規模になるという。

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