これらツールの整備は、
の4つのステップでそれぞれ進められた。
まず、計画、対象の選定に関して、喜多氏は「当初、3年計画で設計業務の70%を効率化し、新規開発品など、高付加価値設計へ移行することを目標に掲げた」と語る。この目標を実現すべく、不足している技術、知識、ツールは何かという視点に立ち、メンバーとパートナー企業を選定。「メンバーは、通常業務から隔離した専任者2人を選出し、週1回の定期的な打ち合わせを行う方向でプロジェクトをキックオフした」(喜多氏)。スケジュールに関しては、組み合わせ設計ツールとテンプレート設計ツール(1機種目)をそれぞれ1年間で準備し、その後、テンプレート設計ツールの機種展開を拡大していき、現在も継続中だという。
「どの製品を対象とすべきかの検討については、まず主要製品の仕様や従来の作業内容などを調査し、その中から効果の大きいものを選別して、自動化可能なものを決めていった。完全な自動化は難しいため、自動化適用範囲の広さと連続性を重視して判断した」(喜多氏)
なお、計画、対象の選定における聞き取り調査については、幅広い製品知識や業務手順の熟知が必要になるため、若手だけでなく、ベテラン設計者へのヒアリングが不可欠。また、実現方法を議論し、メンバー間で共有すると同時に、完成形のイメージまでしっかりと検討することが重要だとする。
実装すべき機能や満たすべき性能を明確化する要件定義については、製品仕様や設計手順などを調査し、インプットとアウトプット、設計ルールやパラメータの決定ロジックといった設計業務における過程を整理した。そして、こうして整理した内容を基に、入出力仕様書を作成。入力仕様には、定義、種類、条件、値、制御などを、出力仕様には、定義、種類、処理、出力内容などをまとめていく。
しかし、要件定義を進めるに当たり、「設計の方法が2パターン存在する(どちらも正しいが設計者によりアプローチが異なる)」「自動化の困難なオプション部品が存在する」「設計者ごとに判断基準のバラツキがある」といった幾つかの課題に直面。「これらについて速やかに調査し、最適解を見つけなければならなかった」と、喜多氏は当時の苦労を振り返る。
入出力仕様書にまとめた内容を基に、どのように機能としてそれらを実現するかを検討し、機能仕様書を作成する。不明なものが出てきたら、追加調査や実現方法の検討といった作業が都度発生する。また、これらの検討と同時に、3Dモデル構築に必要なルールについても検討。そして、機能仕様書と3Dモデル構築の検討項目が固まったところでプロトタイプを作成し、関係者に対して社内報告会を実施したという。
「システム構築の範囲は、ツールの機能や設計ロジックだけにとどまらず、3Dモデルや仕様入力のインタフェースにも及ぶ。これらは機能仕様の検討段階で決めるべきことだ。仕様を入力する画面については、イメージ図を用いて何度も検討を重ねた。見やすさや使いやすさとともに、選択候補の表示方法やアラートなど、実際の利用者を想定して改良を繰り返し行った」(喜多氏)
この段階では、まず開発者自身で繰り返しテストを行う。その際、入出力仕様書と機能仕様書の内容を満たしているか、メンテナンス性はどうかといった視点も重要だという。また、課題管理表を準備し、対策候補(内容と対策)とともにその期限を管理、共有することも不可欠だとする。「テンプレート設計ツールでは50個以上、組み合わせ設計ツールでは100個以上の課題に対応した」と喜多氏は振り返る。
その後、メンテナンスマニュアルとユーザーマニュアルの2種を整備し、実際の利用者に最終テストをしてもらい、晴れて現場納品を迎えた。
「ここでのポイントは、管理者を必ず立てて、課題対応、マニュアル更新がすぐに行える体制を構築することだ。ツールを納品しても運用までもっていくためには、多くの課題に対応する必要がある。この部分をスピーディーに対応できるかどうかが、スムーズな運用開始とその後の現場定着を左右する」(喜多氏)
以上のプロセスでツール整備に取り組んできた喜多氏と武井氏だが、
に関しては特に苦労させられたという。
こうした難題に対して、喜多氏と武井氏の両名は「ベテラン設計者でも全ての製品を把握している人は少ないし、既存の資料や情報が完全であるという保証もない。そのため、中堅からベテランまでとにかく多くの設計者に協力を仰ぎ、ルールを取りまとめた。また、仕様や機能が具体化していくにつれて、特殊な仕様などが判明。こうしたものを自動化の対象とすべきかどうか、その判断に苦労した。その際、ヒアリングを行うと同時に星取り表で項目を整理しながら、それぞれの優位性を比べて判断していった」(喜多氏)そうだ。
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