ツール導入による設計の自動化プロジェクトは、喜多氏と武井氏、そして彼らの上長の3人が中心となり推進。若手設計者が主体となって、調査や聞き込み、検討を行うことで、若手自身の成長を促すとともに、ツールに知見やノウハウを集約させることで、なぜこのような設計になっているのか? といった設計意図に対する疑問などが(ツールを見れば)分かるようになり、設計スキルのベースアップにもつながる。そして、「知識や経験の少ない設計者でもツールを活用することで、大幅な時間短縮、作業効率アップが図られ、“働き方改革”の実現にも貢献できると考えた」と武井氏。
では、具体的にどのようなツールを準備したのだろうか。1つは標準モジュールを対象とした「組み合わせ設計ツール」。もう1つが、これまで都度設計で対応していた新規/個別設計品を対象とした「テンプレート設計ツール」である。いずれも表計算ソフトの「Excel」をインタフェースとし、SOLIDWORKSと連携して3Dモデルや図面などを自動生成する。
組み合わせ設計ツールでは、設計者がExcelのシート上で、これまで整備してきたモジュールの中から仕様を満たすものを選択し、それを筐体のどこに配置するのかを決め、注記情報などを指定する。そして、プログラムを実行するとSOLIDWORKSが立ち上がり、自動的に3Dモデル、図面、E-BOMを作成してくれる。「従来の設計では仕様確認から図面の出図まで、全ての工程を手作業で行ってきた。組み合わせ設計ツールにおいても仕様入力については一部手作業が必要だが、3Dモデル、図面、E-BOMの作成が全て自動で行われるため、設計依頼から出図までの時間が大幅に削減できるようになった。若手設計者であっても、仕様さえ入力できれば要求通りの設計が行える。トータル30分程度で作業が完了する」(武井氏)。
一方、テンプレート設計ツールは、Excelのシート上で寸法値やオプションを指定してプログラムを実行すると、あらかじめ準備してあるマスターモデルを基に、仕様通りの3Dモデルを自動で作成してくれる。例えば、特定寸法以上の数値を入力した場合、自動で扉の枚数が変わるなど、さまざまな条件にも対応する。「仕様を入力してから3Dモデルが完成するまでの所要時間は、5〜10分程度だ」と武井氏。
なお、これらツールの開発に当たり、大塚商会の「テンプレート設計サービス」を活用したという。SOLIDWORKSとのAPI連携が可能で、機能を選択して実行順に並べるだけの“プログラミングレス”で自動化システムを構築できるのが特長。武井氏は、(1)設計者も使い慣れたExcelベースである点、(2)社内の図面管理システムやPDMと連携できる点、(3)基本機能がそろっており導入コストが安い点、(4)カスタマイズやメンテナンスが比較的容易な点を採用のポイントとして挙げる。
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