そして「乗り心地」の代表例として挙げるのが「小型、軽量で高性能」(同社)という、新開発の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」である。
3代目フィットでは、国内市場向けに採用した1モーターのハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」を中心にリコールが多発。それまで築き上げてきた、フィットの信頼を大きく損なった過去がある。4代目となる新型フィットに搭載するハイブリッドシステムは、この3代目モデルのつまづきに対するリベンジと言ってもいい。
かつての伊東孝紳氏の社長時代には、ハイブリッドシステムを1モーター、2モーター、3モーターで展開を推し進めようとしたものの、フィットや「ヴェゼル」の1モーター、「レジェンド」などの3モーターについては成功したとはいい難い。ただし、2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD」については、アコードからオデッセイ、そしてステップワゴンと、順次小型化を進めて採用を広げ、一定の評価を得てきた。
新型フィットに採用するe:HEVはこのi-MMDがベースになっている。ホンダは2030年までにグローバル四輪車販売台数の3分の2を電動化する方針だ。八郷氏は、東京モーターショー2019に併せて、二輪車、四輪車の電動モビリティー製品や、エネルギーマネジメント技術を含む独自の高効率電動化技術の新たな総称「Honda e:TECHNOLOGY(ホンダ イーテクノロジー)」を発表。その1つとして「モーター走行を中心とした新たな時代のハイブリッドシステム」(同氏)に位置付けるのがe:HEVになる。新型フィットに加え、その後の発売を控える新型アコードにも採用する計画だ。
また、e:HEVでは、ハイブリッド車を示す略語として「HEV(Hybrid Electric Vehicle)」を使っているところは、「HV」をハイブリッド車の略語とするトヨタ自動車への強い対抗心が見え隠れする。2代目「インサイト」は「プリウス」を強く意識して低価格モデルをラインアップし、3代目フィットが「アクア」を超えて“燃費世界一”を達成するなど、ホンダのハイブリッド車はトヨタ自動車のハイブリッド車に対して常に強い対抗心があった。
日産自動車が、「ノート e-POWER」によって新たなハイブリッド車市場を切り開いたように、新型フィットもこれまでのハイブリッド車のイメージを刷新すべく、e:HEVに賭けるものがあることが確かだ。
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