なお、NPEでのEUROMAP 77のリリースに合わせてEUROMAPがファクトシートをリリースしているが、その中でEUROAMAP 77の開発に携わった欧州の射出成形機メーカー、MESメーカー、制御機器メーカーが紹介されている。筆者の所属するベッコフオートメーション(Beckhoff Automation)も制御機器メーカーとして当初より開発メンバーとして参画している。
欧州を代表する機器メーカーの多くが名を連ねており、EUROMAP 77が欧州のみならず業界全体の標準規格として適用されていく可能性を示唆している。加えて、NPEに先んじて実施された「Plugfest(プラグフェスト、相互接続性試験)」にて射出成形機メーカー、MESメーカー、制御機器メーカーなど各社の製品間での相互接続性が確認されていることから早い段階での実運用への期待が高まっている。
2018年5月にEUROMAP 83、77のリリース、2019年1月にEuromap 82.1のリリースと関連規格のリリースが続いている。こうした中で、2019年10月16日〜23日に開催される「K 2019」では日本の射出成形機メーカーの多くがEUROMAP 77に対応した製品を展示することが計画されており、一気に普及が進むきっかけになると海外からも注目を集めている。
では、EUROMAP 77をはじめとしたOPC UAベースのEUROMAP規格に対応するにはどうすればよいのだろうか。
これらに対応していくためにはまずEUROMAPがどのような役目を持っているのかを理解する必要がある。前述した通りEUROMAP 77などの新しい規格はインダストリ−4.0に適応したメーカーの垣根を超えた相互通信のための共通規格である。これは、言い換えればインダストリー4.0実践戦略で定義されている「インダストリー4.0コンポーネント」における「管理シェル」の役割といえる(※)。
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インダストリー4.0コンポーネントとはインダストリー4.0対応の機器やステーションなどの最小ユニットのことを表しているが、メーカーや機種別によって異なる規格を持つ機器を相互に接続する(インダストリー4.0対応する)ための仕掛けが管理シェルである。規格の差異を吸収して統一するラッパーのようなものと考えると分かりやすい(※)。
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上図は「管理シェル=EUROMAP」を介して、さまざまなメーカーのタイプの異なる機器がMESとつながり、変数やイベントなどのデータをやりとりしている様子を表したものある。射出成形機とMESとの間の通信であれば、EUROMAP 77が管理シェルとなり、温度コントローラーとの通信であればEUROMAP 82.1が管理シェルになるというわけだ。
一言で「管理シェル」といってもそこに求められる機能は複数ある。まずは射出成形機などの各種機器に搭載された制御機器から必要なデータを取得する仕組みが必要だ。当然、得られるデータは各メーカー独自規格であるため、ただ単純に取得しただけでは使うことはできない。これを共通化するために各種EUROMAPにのっとったフォーマットに変換する機能も必要になる。さらに、共通化したデータをOPC UAの通信規格で通信するためにOPC UAサーバの機能も持たなければならない。本連載では、このようにデータを取得し、変換し、送信するための一連の機能を統合してEUROMAPゲートウェイと呼ぶことにする。
このようなEUROMAPゲートウェイ機能を実装することで各種機器はEUROMAP機能を実現できるわけである。現状、実現可能な方法としては以下の2つのパターンが想定される。
前者は各機器メーカーが今後オプション機能などの形で実現するだろうし、後者は小型ゲートウェイデバイスとして各デバイスメーカーがラインアップを用意してくることが予想される。EUROMAPゲートウェイ自体は複雑な処理を求めるものではないため、通信規格が受け入れられると一気に市場に広がる可能性が高い。
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