EUROMAPのデータフォーマットについて、最初にリリースされたEUROMAP 77(および汎用規格であるEUROMAP 83)を例にとって紹介していこう。
OPC UAの規格をベースとして射出成形機とMESとのデータのやりとりに必要なさまざまなデータ型を定義して拡張したコンパニオン規格がEUROMAP 77である。EUROMAP 77は3種類のユニットで構成されている。
データの「見える化」を行うための「EUROMAP 77 Basic」、MESから射出成形機に対して生産実行を行う「EUROMAP 77 Jobs」、機器情報や生産条件を含む一連のデータをMESと射出成形機間でやりとりするための「EUROMAP 77 Production Dataset Management」の3つである。
ここでは、1つの例として「Machine Status Type」「Machine MES Status Type」「Active Job Values Type」を紹介する。
「Machine Status Type」は射出成形機の運転状態(automatic mode、semi-automatic mode、manual modeなど)を定義した型だが、本来であればメーカーごとに異なる運転状態を示す値(例:メーカーA:automatic mode=0、メーカーB:automatic mode=1)をEUROMAPによって共通化することで1つのフォーマットであらゆるメーカーの射出成形機と通信が可能になる。汎用性の高いデータ型のため、この型についてはEUROMAP 83で定義されている。
次に、「見える化」を実現するためのEUROMAP 77 Basicユニットの中の1つである「Machine MES Status Type」だが、この型も概要はEUROMAP 83で定義されている。ただ、詳細のClassificationの定義はEUROMAP 77の定義が引用される。
このデータ型の定義により、メーカーの異なる射出成形機が複数台並んだ製造ラインの稼働状況を1台のMESで特別な設定は不要で見える化することが可能になる。
最後に「Active Job Values Type」だが、これはサイクリックなイベントをMES側からトリガーを引くことで射出成形機が保持している生産条件に従って生産実行を行うためのデータ型である。
EUROMAP 77が単にMESと射出成形機間のデータの見える化にとどまらず生産実行まで行えるように定義されている意味は非常に大きい。MESの目的が生産計画に基づいた機器の稼働管理である以上、機器の状態がMESから「見える」だけでは十分な機能を有しているとはいえないからだ。インダストリ−4.0が目指すシームレスにつながる工場を実現するためにはメーカーの違いを意識せずに生産実行できる機能は不可欠であり、その意味でEUROMAP 77はインダストリ−4.0を体現するために適した規格といえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.