では、入社したばかりの会社を辞めたくなったときはどうすればいいのだろう。「今の環境がイヤで、別の会社ならいいのではないかという感覚だけだと、転職しても同じような状態になってしまう。辞めてしまう前に、なぜ辞めたいのかをもう一度考えて、しっかり整理した方がいい」と関寺氏はアドバイスする。
まず現在置かれている状況について、それが一時的なものなのか、ずっと続くものなのか、会社の問題なのか、個人の問題なのかなど、原因を整理してみること。そして、それは転職することによって本当に改善できることなのか、あるいは現職で改善されるとしたら今の会社にいたいのか、改善されても辞めたいとしたらその理由は何か……と「辞めたい」という気持ちを掘り下げて考えることが重要だ。
また、別の会社で仕事をしている人や大学の先輩など、第三者に相談するのもいい。仕事を変えざるを得ない深刻な問題なのか、あるいは一般的に仕事をする上で乗り越えなければならない問題なのかなど、他の環境と比較することで見えてくることもある。
自分一人で考えることが難しければ、転職エージェントのコンサルタントに相談するのも一案だ。いろいろな質問を投げかけるなどして、問題を整理したり、掘り下げたりすることを手伝ってくれるはずだ。またいろいろな企業の状況を知っているので、転職するとどう変わる可能性があるのか、あるいは変わらない可能性があるのか、フラットな立場で情報も提供してくれる。「われわれエージェントの仕事は、相談に来られた方全員に転職してもらうことがゴールではない。情報提供やアドバイスをしながら、その方のキャリアを一緒に考え、最終的に本人が転職した方がいいと判断すれば、しっかりサポートする」(関寺氏)。
アンマッチが起こらないようにするには、どのように転職先を選べばいいだろう。
インターネットなどでいろいろな企業の情報や社員の口コミなどを見ることができる時代だが、できるだけ立体的な情報を入手することが大切だ。例えば企業が発信している情報は、ポジティブな内容に傾いて当然だし、辞めた社員の口コミはネガティブになるだろう。なかには、誰が書いているのか分からないものも少なくない。そういう一方通行の情報だけで思い込んでしまうのは危険だ。エージェントでなければ得られない情報や、実際自分が面接で感じたことなどを総合的に判断すれば、大きなアンマッチは避けられる。
もう一つは、今まで選んできた道は、どういう理由の積み重ねだったのかを思い起こすこと。大学を選んだ理由、学部や研究室を決めた理由、なぜモノづくりの世界を目指し、その会社への就職を選んだのか。そういう決断のポイントに立ち返って考えてみると、現職を中長期的に続けることは難しいのか、もう少し今の環境でがんばって経験を積んだ方がいいのかを判断する助けになるという。
最後に関寺氏は応援メッセージをくれた。「自分は何を『したい』のか考えてほしい。こういう物を作りたい、こういう人の役に立ちたい、あるいはお金持ちになりたいとか、社会に認められたいでもいい。何か強い『したい』が明確にあれば、短期の転職もネガティブなばかりではないし、仕事のモチベーションにもなると思う」。
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