――今回、新たに発表された「HP Jet Fusion 5200」「HP Jet Fusion 500」シリーズの特長を教えてください。
秋山氏 HP Jet Fusion 5200は、HP Jet Fusion 4200の上位機種の位置付けで、大量生産での利用を想定したハイエンドの3Dプリンタだ。信頼性と品質の向上、高速造形、新材料の対応などが図られている。
造形スピードに関しては、これまで造形面に対し、プリントヘッドが一往復すると一層の造形が完了していたが、HP Jet Fusion 5200では片道で一層の造形が可能になったため、造形スピードがアップし、生産性が向上した。具体的には、高さ380mmの造形で従来機は16.5時間かかっていたものが、HP Jet Fusion 5200では11.5時間、高速モード(※PA12材料に対応)では9.5時間で造形が完了する。ちなみに、HP Jet Fusionの造形時間は高さで決まるので、例えば380mmの柱を1本配置しても、それを複数配置しても造形時間は同じだ。だから、造形エリアにパーツを詰め込めば詰め込むほど1パーツ当たりの製造時間とコストが抑えられる。まさに量産向きといえる。
もちろん、単に高速になっただけではなく、造形品質も向上している。高解像度の赤外線カメラによって造形物の温度と周辺エリアの温度を5000点に分けてリアルタイム計測し、随時温度を補正する機能が強化された。加えて、新たに寸法精度の向上に寄与するソフトウェア「HP 3D Process Control」を提供し、高い寸法精度と繰り返し性を実現している。このようにハード、ソフトの両面から品質向上を図っている。
また、HP Jet Fusion 5200の専用材料として、BASF製TPU(エラストマー)材料も準備する。今後、オープンプラットフォーム戦略に基づき、HP純正の材料だけではなく、材料メーカーによるHP認定材料のバリエーションも増やしていく考えだ。
そして、機能性試作や小ロット生産の領域で活用できるのがHP Jet Fusion 500だ。白色モデルが造形可能な「HP Jet Fusion 540」と、HP初となるフルカラー造形に対応した「HP Jet Fusion 580」で構成される。
ナイロン材料をフルカラーで造形できる3Dプリンタは、マーケット初だと認識している。ナイロン樹脂粉末にCMYKのインクを混ぜ合わせながら噴射していき、色を再現する。ここにも2Dの大判プリンタの技術が生かされている。デザイン性や機能性の高い造形はもちろんのこと、例えば、パーツにQRコードを印刷してトレーサビリティーの確保に役立てたり、冶具に色を付けて組み立て時の注意を促したりといった活用も可能だ。フルカラーとナイロンの組み合わせにより、さまざまな用途が考えられるだろう。
さらにHP Jet Fusion 500で注目してほしいのがコンパクトな筐体だ。実は、HP Jet Fusion 500のパーツのうち、140以上もの部品がHP Jet Fusionで造形されたものだ。従来の設計では350以上になるものを、3Dプリンタならではの設計を施すことで部品点数を大幅に削減し、筐体の小型化に寄与した。HPでは、HP製品にHPの3Dプリンタ(HP Jet Fusion)で造形したものが使われることを「HP on HP」と呼んでいる。
今回、新たにHP Jet Fusion 500とHP Jet Fusion 5200を加えたことで、設計試作から量産までを一気通貫でカバーできるようになった。HP Jet Fusion 500で試作した3Dデータが、最終的にHP Jet Fusion 5200に流れていく、そのようなデジタルマニュファクチャリングの実現を目指していきたい。
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