あいおいニッセイ同和損保は、テレマティクス技術を活用した新たな事故対応サービス「テレマティクス損害サービスシステム」を開発した。システム導入による効果として、これまで対物賠償保険金の支払いまでにかかっていた時間を約50%短縮できるという。
あいおいニッセイ同和損害保険(以下、あいおいニッセイ同和損保)は2019年8月9日、東京都内で会見を開き、テレマティクス技術を活用した新たな事故対応サービス「テレマティクス損害サービスシステム」を開発したと発表した。野村総合研究所、SCSK、富士通、大日本印刷、インテリジェント ウェイブ、日本IBM、SBI FinTech Incubation(SBIFI)との共同開発となっており、「各社の最新技術とテレマティクス情報を複合して事故対応で実用化する取り組みは業界初」(あいおいニッセイ同和損保 取締役専務執行役員の樋口昌宏氏)としている。開発したシステムの機能は、2019年4月から現行の損害サービスに組み込まれており、2020年度上期までに全機能を順次導入する計画。ユーザーは、ドライブレコーダーの提供を含めて月額850円のオプション料金で利用可能になる。
新たに開発したテレマティクス損害サービスシステムは、あいおいニッセイ同和損保が提供するドライブレコーダーなどのデバイスから得られるデジタルデータを用いて、事故の発生を自動で検知するとともに、事故発生前後のカメラデータから状況を把握し、事故の過失割合の判定サポートまでを行うサービスだ。樋口氏は「当社は既に24時間365日対応する事故サービス『I'm ZIDAN』を提供しているが、これとテレマティクス損害サービスシステムの組み合わせによって新たな付加価値を提供できる」と語る。
ここで言う新たな付加価値とは、テレマティクスデータから事故発生を自動で検知することによる「受信型から発信型へ」、事故発生前後のデジタルデータから状況を可視化することによる「推測から視認へ」、そしてデジタルデータを基に判定した過失割合情報から示談交渉を迅速かつ適切に進める「主観から客観へ」の3つになる。システム導入による効果としては、これまで対物賠償保険金の支払いまでにかかっていた時間を約50%短縮できるとしている。
テレマティクス損害サービスシステムのプラットフォームは、ビッグデータやAI(人工知能)などの技術を採用するとともに、PoC(概念実証)やアジャイル開発手法を取り入れることで短期開発に成功した。また、さまざまなデータ分析や業務利用にもつなげられる拡張性も担保しており、新商品の開発のみならず、自動車業界で進む「CASE」や「MaaS」にも対応できるという。2020年度上期までの投資金額は約20億円だ。
プラットフォームの開発では、プロジェクト全体の管理やアジャイル開発手法の導入、テレマティクスデータの可視化は野村総合研究所が担当した。ドライブレコーダーの加速度センサー波形から事故発生を検知するアルゴリズムはSCSK、事故発生前後のカメラデータから周辺状況を把握する技術は富士通、過失割合の判定をサポートする判例検索機能やデータベース構築は大日本印刷とインテリジェント ウェイブが開発を担当している。
そして、自動車メーカーや地図や天候などのサービスプロバイダーなどとの外部連携や、あいおいニッセイ同和損保社内の業務システムなどとの連携を行うAPI連携基盤は日本IBMとSBIFIが開発を担当した。API連携基盤は「IBM Cloud」上で動作しており、API連携にはIBMの「API Connect」などを用いている。金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に準拠したセキュリティ、開発支援、運用機能は、SBIFIの共同利用型SaaSを採用することで、検討期間を含めて約5カ月での早期リリースを実現した。なお、データレイクとなるデータ蓄積プラットフォームについては、IBM CloudではなくAWSを用いており、ビッグデータを扱うためのリソースや拡張性を担保したという。
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