―― では実際にカメラを拝見したいと思いますが。あの、写真でみるより案外大きいんですね。
大塚 皮膚科医は女性の方が多いので、最初はポケットに入るくらい小型にしようとか検討したんですけど、いろんな持ち方をしたいという要望もありまして、それを考えるとこれがちょうどいい大きさなんですよね。
青木 今のカメラもいろんな持ち方をされてると思うんですけど、この形だと右手だけでも持てますし、左手でレンズ部を持って画面タッチで撮るとかも出来ますし、ちょうどいい感じですね。
大塚 左手でしか撮れない場所っていうのも結構あるんですよね。しかもぶれないように撮影しないといけないんで、カメラの固定方法だけはかなりこだわっていますね。
―― なるほど。だからあえて左側は大きく開けて、レンズに手が回しやすくしてあるって事なんですね。
大塚 その辺のデザインは、コンシューマー向けデジカメに携わっていたデザイナーも入ってます。デジカメ事業部が潰れちゃってから久々のカメラデザインなので、喜んでやってます(一同笑)。
小甲 では実際に撮影してみますけども、連続で3枚撮影します。
―― もうレンズを皮膚にくっつけちゃっていいんですか。
小甲 レンズの部分を見ていただくとお分かりかと思うんですが、鏡筒部の中でLEDライトが光るんですよ。そのLEDが3種類あって、内部の3種類のフィルターと連動して3枚撮影します。普通の撮影と、反射防止の偏光フィルター、それからUV撮影ですね。
皮膚っていうのは薄い透明な皮が被っているわけですが、そのまま撮影するとそれによる反射が起こってしまうんですね。皮膚科のお医者さんにいくと、診察に特殊な拡大鏡を使うんですが、レンズに透明のジェルを塗って皮膚にピタッとくっつけると、空気層がなくなって表面の反射がなくなる。それで表皮内の中を見るんですけど、偏光フィルターを使えばジェルなしで皮の反射を防止しますので、そのままの撮影でOKです。
大塚 UV撮影というのは、われわれの方で提案して付けてるんですけども、UVだと表面のシミがダーッと見えてくるんですね。これで表面のキメの状態というか、表面状態がかなり見えてきます。
初めはいろんな先生にご紹介しても、全然興味を示していただけなかったんです。いらないなら取っちゃおうかという話もある中で、でもせっかくフィルター3枚入れられるんだから一応付けとこうと。で、ある時先生が気付いて「あれ、なんかこれ周りがよく見えるじゃないか」みたいな話になって。ちょっと後になってからですが、これはいい機能なんじゃないか、ということを言っていただいたりしているところです。
―― オプション品も結構あるんですね。
小甲 いろいろありますよ。例えば、この立体アダプターというのを付けると、表面から少しだけ浮くっていうか、間が空くんですね。ほくろは、皮膚から少し盛り上がった大きなものもあるんですが、撮影時に押しつぶしてしまうと問題があるので、少し浮かして撮影する必要があります。そのちょっとだけ浮かす、というのがなかなか難しいので、作りました。マクロ撮影だとピントが浅いので、フォーカスを変えながら5枚ぐらい撮影して、合成して全部にピントが合った絵ができるという機能も入れました。
あと小径アダプターですね。これは指の間などの狭い箇所を撮ろうとすると、そのままでは入らないので何かアダプターが欲しいという話がお医者さんからあったので作りました。ただし、これで撮ると撮影範囲が狭いので、真ん中にピントが合うように専用モードを用意しました。これを付けた時はそのモードになって、撮影する時には中のLEDライトも専用のものに切り替わります。
それから顕微鏡撮影用のアダプターもあります。顕微鏡はほとんどの診療所にあるんですけど、撮影用の設備まで用意されているところって、大学病院とか大きいところになるんですね。顕微鏡があればやっぱり顕微鏡撮影はしたいです、それもこのカメラでやりたいですってお話がありまして。
カメラが落ちたら大変ですから、三脚ネジでしっかり固定できるよう作ってあります。またアダプターの中にもレンズを3枚ぐらい入れて、接眼レンズを外してアダプターを差し込めばピントが合うようになっています。
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