特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

東大発ベンチャーが打ち破るLPWAの限界、マルチホップ無線「UNISONet」の可能性モノづくり×ベンチャー インタビュー(2/2 ページ)

» 2019年07月03日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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UNISONet通信モジュールを販売へ、IP化によるソフトウェア提供も視野に

 ソナスの事業展開はさらに広がりをみせつつある。先述した通り、工場や倉庫内設備の予知保全という新たな用途開拓を進めるとともに、UNISONetに関わる製品のラインアップを拡充させているのだ。

 現在、UNISONetは無線計測システムとして販売されている。同システムはマルチホップ無線であるUNISONetによって相互に接続されるセンサーユニットと、これらセンサーユニットのネットワークを管理するベースユニット、Windows用ソフトウェア、クラウドから構成される。システムに接続されるセンサーユニットが全て、μsオーダーの精度で時刻同期して計測を行えることが最大の特徴であり、構造物モニタリングや設備の予知保全に最適な理由になる。

UNISONetを用いた無線計測システムの構成 UNISONetを用いた無線計測システムの構成(クリックで拡大) 出典:ソナス

 センサーユニットのセンサーとしては、アナログ・デバイセズの3軸加速度センサー「ADXL355」と「ADXL357」を用いていたが、現在はセイコーエプソンの3軸加速度センサー「M-A352」や、グローセル(2019年7月1日付けでルネサスイーストンから社名変更)のひずみセンサー「STREAL」なども利用できるようになっている。大原氏は「これらセンサーメーカーとは密接に協力して開発を進めてきた。24時間の構造物モニタリングを実現するためのブレークスルーは、UNISONetだけでなく、これらセンサーの高い性能も大きな役割を果たしている」と説明する。例えば、振動を計測する3軸加速度センサーでもアナログ・デバイセズの製品は消費電流の小ささが特徴であり、セイコーエプソンの製品は計測精度が特徴になっている。「これからもエッジのきいたセンサーデバイスと組み合わせて行きたい」(同氏)。センサーユニットの販売パートナーとしOptageなどの協力も得ている。

UNISONetのセンサーユニット UNISONetのセンサーユニット。左側が「ADXL355/357」搭載品、右側が「M-A352」搭載品(クリックで拡大)

 IoT活用を進める際には、技術を試すためのPoC(概念実証)が重要な役割を果たす。ソナスはUNISONetという独自の無線技術を用いたPoCを広げるため「Dash PoCサービス」の提供を始めた。多様なセンサーや電源に対応可能な基板を用意しており、顧客がセンサーを選定すればPoCに必要なもの一式を最短2週間で納品できる。PoCで一定の成果が得られれば、そのまま本番環境に移行するのも容易だという。

UARTインタフェースを備えるUNISONet通信モジュール 中央にあるのがUARTインタフェースを備えるUNISONet通信モジュール(クリックで拡大)

 Dash PoCサービスの提供に向けて開発したのが、UARTインタフェースを備えるUNISONet通信モジュールだ。2019年内をめどにモジュール単体の販売も検討している。「2020年内にはモジュールの量産製造パートナーを発表できれば」(大原氏)。また、UNISONetの技術は、さまざまな通信の物理層に載せられるプロトコルスタックであるため、IP化してのソフトウェア提供まで視野に入る。

 2019年6月には、2.4GHz帯を用いて通信を行う「UN Classic」に加えて、新たに920MHz帯を用いる「UN Leap」と「UN Metro」の提供を始めた。通信速度の性能を重視したUN Leapは、UN Classicと同じ通信速度2KB/sを維持しつつ、1ホップ当たりの最大通信距離をUN Classicの500mから2kmに拡大した。通信距離重視のUN Metroは、1ホップ当たりの最大通信距離が5kmに達する。

グローバル展開のために、まずユーザーコミュニティーづくりから

 将来的には、UNISONetのグローバル展開も目指す。「そのためには標準化が必要だ。一足飛びに標準化に進むのではなく、まずはユーザーコミュニティーから始めて、UNISONetアライアンス的なものを結成してという形で進めたい」(大原氏)という。

 大原氏は「事業を立ち上げた当初の2017年は“IoT”が一番過熱していた時期だ。今はブームが落ち着きをみせつつあり、今後は筋の良いものだけが生き残るのではないか。LPWAネットワークはいろいろ選択肢があるものの、ほとんどが低消費電力と広域のトレードオフとして限られたデータ通信しかできないのが実情だ。2KB/sというUNISONetの通信速度があれば、この限界を打破できると確信している」と述べている。

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