次に、生産設備のOEE(Overall Equipment Effectiveness:総合設備効率)が低下している現場を例に、ThingWorxによるデータ収集と分析、ダッシュボードでの可視化について紹介。併せて、AR(Vuforia)を組み合わせて活用することで現場の作業者が生産設備の前にいながらリアルタイムの稼働状況を確認できる点にも触れた。
しかし、その一方で「生産設備のすぐ目の前にいられない、あるいは行けないというケースも考えられる。その場合、ARではなくVR(仮想現実)で対応するのがよい。VRは物理的な距離の概念をなくし、1週間前、2週間前と時間もさかのぼってその時の状況を確認できる。ある意味“タイムマシン”のように活用できる」とへプルマン氏は説明する。
その際、「HTC VIVE」のようなVR用のHMDを利用するのが一般的だと思うが、PTCは3Dカメラで取得した点群データを基にしたVR空間の構築を行い、ディスプレイ上で仮想的に工場ツアーができる環境を提案。これは今回新たに発表したMatterportとの協業によるもので、Matterportの技術とリコーの「THETA」に代表される市販の3Dカメラにより、設備を含む工場空間を丸ごとデータ化し、ThingWorxおよびVuforiaを活用して工場のデジタルツインを実現するというものだ。「当初、VRによる工場ツアーができないかと考えて連携を進めていたが、ARの体験にも応用できると考え、目の前にある現実のものと3Dモデルを可視化したもの、そして存在しないバーチャルなものを組み合わせた体験も実現しようとしている」(へプルマン氏)。
そして、工場などでの利用に最適なAR用HMDとしてマイクロソフトの「HoloLens 2」を紹介。2019年2月の「Mobile World Congress 2019」でPTCのVuforiaがHoloLens 2を標準機能でサポートすることを発表し、その際にアナウンスのあったHowdenの取り組みについても触れた。Howdenは「Azure」上で動作するThingWorxと、Vuforiaを活用したソリューションでHoloLens 2を用い、設備(コンプレッサー)の維持管理、保全活動に役立てているという。
基調講演の最後、へプルマン氏はフィジカルの世界とデジタルの世界の関係を陰陽をモチーフにしたおなじみの図で示し、次のようにまとめた。
「DXの要であるデジタルツイン(デジタルの双子)にとって、PLMや3D CADの情報は持って生まれたDNAのようなものであり、IoTで取得される情報が実際の人生体験を示しているといえる。また、IoTで取得したデータをAIで分析したり、シミュレーションしたりといったことも可能で、デジタル世界の情報をフィジカル世界にフィードバックする際には、ARが人間の助けをしてくれる。このようにPTCは高度なデジタルツインを作り出すための豊富なソリューションを備えており、そのお手伝いができる用意がある。われわれのソリューションが顧客企業のDX促進の助けになると確信している」(へプルマン氏)。
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