日立製作所の漏水検知サービスでは、自社開発した高感度の振動センサーを水道管に設置するとともに、振動センサーからのデータをLTE-MなどのLPWA(低消費電力広域)ネットワークでクラウドに収集する。振動センサーは、低ノイズ化によって既存の汎用センサーと比べて2桁高い測定精度を実現しており、消費電力の低減で長期間の稼働にもつなげている。これまでの実証実験では、センサーから100m離れた家庭への配水管の毎分0.6l(リットル)という微小な漏水、同250m離れた水道管の毎分8lと比較的規模の大きい漏水を検知できている。このため、センサーは300m間隔で設置すればよい。また、NTTグループとの協業によるLPWAを用いた通信を含めて、内蔵バッテリーだけで5年以上の連続稼働が可能である。
センサーから収集したデータを用いた分析は、誤検知の防止が特徴となっている。振動センサーを使った漏水検知の課題となっているのが誤検知の多さで、「8割が誤検知という場合もある」(竹島氏)。日立製作所の漏水検知サービスで用いる、高感度センサーとデータ分析アルゴリズムの組み合わせでは、現在までに誤検知は一切起きていないという。
漏水検知サービスを利用する場合、多数のセンサーを設置する必要があるが、水道管の制水弁に磁石を使って設置すればよいので手間は掛からない。センサーからの通信もLPWAによる無線通信であり、データはそのままクラウドに収集される。
導入のメリットとしては、熟練作業員に掛かる負担の低減や、より計画的な水道管の保守管理が可能になることを挙げる。災害時には、医療機関の付近にある漏水箇所から修繕するなど、修繕作業の優先順位付けなどに活用できるとした。
ビジネスモデルとしては、日立製作所がセンサーを保有し、漏水の継続監視や漏水箇所のスクリーニング、漏水調査会社と連携しての調査といったサービスを提供する。竹島氏は「漏水検知と関わる、より広範な作業を含めた包括での業務委託という形もあり得る」と述べる。
今後は、振動センサーに加えて、水道管に用いられている鋳鉄の腐食を検知できる比抵抗センサーなどを追加したマルチセンサー化により、管路状態監視や管路更新支援計画などのサービス提供を検討している。検知対象も水道管だけでなく、ガス管、下水道管、電力線や通信線の配管などに広げていく。「2025年度以降は海外展開も模索していきたい」(竹島氏)という。
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