連載最終回となる本稿では、業務改革が行われていないアフターマーケットが今後大きなビジネスチャンスであることを示し、その可能性であるサブスクリプションモデルを解説する。
連載第1回、第2回で示したように、業務改革が行われていないアフターマーケットは逆説的に見ると、今後大きな効果を上げられるビジネス領域である。雑巾を絞るという表現を用いれば日本のアフターマーケットはぬれ雑巾に近い状況だ。絞りとる水分を業務効果として考えてみると、乾いた雑巾を絞るよりはぬれ雑巾を絞る方が業務効果を出しやすいのは明白だろう。
人間系業務の効率化を目的としてシステム化を行うことも同様のことがいえる。既に十分なシステム化が行われている業務領域よりも、ほとんどシステム化がなされていない業務領域の方が業務効率を早く大きく改善しやすい。
下図の折れ線グラフに注目してほしい。製造業の上流から下流までの事業プロセスを横軸に、ITシステム投資率を縦軸にプロットしている。一見して分かるようにアフターマーケットはITシステム投資がほとんど行われていないホワイトスペースであり、それゆえ不況後の欧米系企業が積極的にシステム投資を開始しているわけである。今回引用した数値は2013年のデータだが現在も傾向はほぼ変わっていない。
政府が発行する2018年版ものづくり白書では、経済社会のデジタル化などが進む大変革期である現在は企業に非連続的な変革が求められると指摘する。そして、従来の成功体験にあぐらをかき続け、抜本的な質的変化に対応できていないのではないかと製造業経営層に対して警鐘を鳴らす。同書は製造業が抱える課題や展望を詳細に報告する第1章だけでも180ページ以上あり、その内容は多岐にわたる。よって名指しでアフターマーケットに言及している部分は決して多くない。
しかし、これまで解説してきたように従来のアフターマーケット業務は、ものづくり白書が解決すべき経営課題として挙げる「付加価値の獲得」「省人化」「技能継承の実現」といった要素が多くの場合で欠けている。
将来的な人手不足が予見される今こそ、可能な限りアフターマーケット業務をシステム化し、移管できる業務作業はシステムに任せるべきだ。それによって生まれる空き時間を使って、人間は人間でしかできない高度な戦略、戦術の策定に向かう時ではないだろうか。
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