加熱たばこ首位の「アイコス」、強みは加熱機構と作り方イノベーションのレシピ(2/2 ページ)

» 2019年01月29日 07時00分 公開
[松本貴志MONOist]
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うま味の秘訣はたばこスティックの製造法と加熱方式

 説明会会場には、IQOSの加熱機構やたばこスティックの製造工程を紹介するブースが設置され、加熱式たばこ市場におけるフィリップ モリスの技術力をアピールしていた。

 今回発表されたHEETSを含め、IQOSのたばこスティックはスイス・ニューシャテルの研究所兼工場やイタリア・ボローニャの工場などで生産される。特に、ボローニャ工場は「PMI(Philip Morris International)最大規模の工場で、3年前に設立した。最新鋭の製造機器をそろえており工場内部を見ると驚くと思う」(同社担当者)とし、現在ではたばこスティック生産の大半を同工場が受け持つ。生産量に関しては非開示とするが、「世界中の需要を見て臨機応変に供給を行っている」という。

 たばこスティックの生産は、たばこ葉の選定、たばこ葉の製粉、スラリー(懸濁液)製造、スラリーを成形したばこシートに加工、PLAフィルターとバイオポリマーフィルムフィルターを用いてたばこシートを包む、といった工程に大別できる。

左:たばこ葉と製粉後のたばこ葉粉末 右:PLAフィルターとバイオポリマーフィルムフィルター(右)(クリックで拡大)

 IQOS専用たばこスティックでは3種類のたばこ葉を用いており、テイストごとに投入比率を変化させている。乾燥させたたばこ葉は、後工程で再成形が可能な高い均一性を持つ粒子が細かいたばこ粉へ製粉される。このたばこ粉に水とグリセリン、結合剤(クアーガムと繊維質)を加え、これら原料を均一なスラリーとなるように混合する。ここで、水はスラリーの粒度調整、グリセリンは蒸留温度における蒸気形成、結合剤はスラリー層の強度確保の役割を担う。

 このようにしてできたスラリーは、乾燥プレートによって薄いスラリー層に成形され、たばこシートとなる。独自の吸いごたえを引き出すため、たばこシートに切り込みを入れる工程があることも特徴的だ。なお、メンソールテイストのたばこスティックはスティックが完成した後にメンソールを吸着させるとし、「メンソールを吸着させるラインでは目が痛くなる」とした。

左:スラリーを乾燥させたたばこシート 右:切り込み加工後のたばこシート(クリックで拡大)

 また、IQOSの加熱機構は「たばこスティックを均一に熱する」(同担当者)ことにこだわった設計とした。「(他製品のように)外側から加熱するタイプの加熱式たばこは吸っている途中から雑味を感じてしまう」ことが課題であり、IQOSではたばこ葉本来のうま味を提供するため、スティックを刺した直後ではスティック内側を加熱している。その後、吸い始めてから外側も段階的に加熱させており、スティックを均一に熱する複雑なヒーター形状と制御を採用した。このヒーター形状はIQOS2.2から用いているとする。

ヒーターの形状。材料に金とプラチナを用いている(クリックで拡大)

 その他、フィリップス モリスはIQOSを含めたRRP(Reduced-Risk Products:リスク低減の可能性がある製品)で特許を3400件保有しているとし、加熱式たばこ市場で技術競争力の優位性を強調する。同社担当者は「IQOSはもともと味に定評があったが、IQOS3で壊れにくさなども改善した」と製品の出来に胸を張った。

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