1日当たり20億項目のデータを収集、東芝メモリ四日市工場が取り組むスマート化スマート工場EXPO2019(2/2 ページ)

» 2019年01月29日 11時00分 公開
[長町基MONOist]
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1日当たり20億項目のデータを収集

 半導体製造では、良品の率を高め、低価で作り単価を下げることにビッグデータを活用している。半導体の良品と不良品の比率を「歩留まり」というが、これを高めることが大きな課題だ。

 四日市工場で扱っているデータは一日あたり20億アイテムがサーバに取り込まれる。製造装置としては5000台を超え、自動搬送システムでは50品種で2万工程というトラフィックがあり、自動搬送のロボットの稼働状況は全てサーバに上がってくる。

photo 東芝メモリ 四日市工場 副工場長の赤堀浩史氏

 同工場でのビッグデータの利用について、赤堀氏は「生産、歩留、品質、点検、設備の5領域で用いており、データ活用の最初のステップとして、データを全て集めて見える化を行っている。ただ、20億件のデータから、分析、判断を行い、最適解を求めることは人間には難しい。次のフェーズとして機械学習を取り込み、応用することに取り組んでいる」と現状を紹介した。

 その事例の1つとして、不良原因の自動推定を上げた。同工場では機械学習およびデータマイニングの手法を用いて、不良傾向の発生状況の可視化と不良原因装置の推定を網羅的に行う歩留解析支援システム「歩留新聞」を開発している。

 歩留新聞はウエハー上の特徴的な不良傾向を自動で分類し、それぞれの原因装置候補の抽出を行うというものだ。ウエハー上の不良傾向を自動分類するためにクラスタリング手法を導入。クラスタリングはデータ間の距離や類似度に応じてデータをクラスタに分ける手法で、人手による作業が必要ない利点もあり、さまざまな分野で利用されている。

 不良傾向が類似したウエハーをクラスタリングにより、分類して可視化することで、一枚一枚のウエハーを技術者が目視で確認することなく、不良傾向を把握することが可能だ。

 大規模な半導体工場では日々大量の製品が生産されているために、クラスタリングの精度だけではなく、処理速度も重要な要素になる。同システムではタイムリーに全製品、全不良カテゴリーのクラスタリングを完了するために、並列分散処理が可能なクラスタリング手法「K-Means++法」を採用している。これにより、32並列の計算ユニットを用いることで、従来に比べクラスタリングの処理速度を最大72.5倍に高速化した。

 同システムにより、毎朝、前日までの全製品、全不良カテゴリーのウエハー上の不良傾向、発生トレンド、原因候補の情報を一覧で確認することが可能となった。新しい不良傾向と原因装置候補を技術者に提示することで不良1件当たりの解析時間を平均6時間から2時間に短縮できた。今後は、システム上に蓄積する技術者の知識を活用することで、さらなる時間短縮を目指すとしている。

 こうした事例が成功した要因には同工場内での「整備されたデータ基盤」「会社一体となったプロジェクト体制」「AI開発者の現場への密着」などがあるという。

 今後の課題としてデジタルツインへの取り組みを挙げる。そのために、IoT環境の拡大、工場内の全ての見える化、データ活用できる技術者の育成、データの標準化、セキュリティの強化、機械学習の導入などを進めている。半導体業界では、微細化の限界など、指摘された課題を技術革新により打破されてきた。赤堀氏は「今後もビッグデータやIoTを用いることで(半導体製造は)継続して進歩する」と期待感を示した。

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