会見では、Top 100 グローバル・イノベーターに8年連続選出となった本田技研工業と、今回初選出となった三菱ケミカルが受賞企業講演を行った。
技術者、実業家として名をはせた本田宗一郎氏が創業したホンダ。現在のホンダは、本田技術研究所と本田技研工業がタッグを組む形で研究開発体制を構築している。製品生産と販売を担当する本田技研工業は本田技術研究所に開発委託契約を結んでおり、本田技研工業は開発費を支払う代わりに本田技術研究所から商品図面と知的財産権を受けることは良く知られている。
ホンダがこのような研究開発体制を採ることについて、本田技研工業で知的財産・標準化統括部 統括部長を務める別所弘和氏は「本田宗一郎のように発想豊かな人間が会社に常にいるわけではない。集団の能力を生かせる研究開発体制を構築した結果が分離法人化だ」と説明する。
ホンダの研究開発は「デザインシンキングで進めている」(別所氏)ことが特徴だ。「研究所は技術を研究する所ではなく、人を研究する所だ。試行錯誤を繰り返して商品を作り上げる。今でいうアジャイル開発を以前よりやってきた」とし、その考え方が知財戦略にも息づいているという。
その例として、別所氏はフィットに採用された特許「センタータンクレイアウト(特許第3765947号「車両用燃料タンクの配置構造)」を紹介した。2001年6月より販売開始されたフィットは小型車におけるホンダの世界戦略車として位置付けられ、マン・マキシマム/メカ・ミニマム(M・M)思想に基づいて設計された。センタータンクレイアウトは、車両後部に通常配置される燃料タンクを前席座面下に配置することで車室空間を最大化した特許となる。センタータンクレイアウトを含めたM・M思想は、販売が好調なヴェゼルやN-BOX、N-VANにも受け継がれているという。
また、2018年12月20日より日本でも引き渡しが開始されたHondaJetにも、M・M思想が取り入れられている。一般的なビジネスジェット機はエンジンを胴体後部に設置するが、HondaJetでは主翼上面にエンジンを配置する独特な設計を採用した。この設計についても特許(特許第3980775号「飛行機の造波抵抗低減方法))を取得しており、競合機種と比較して広い客席、荷物室スペースの確保と低燃費に貢献しているとする。
2017年にグローバル合計で特許を6716件、意匠を1342件出願したホンダは知的財産の権利化を着々と進めている。一方で、同社は2018年11月よりマッチングWebサイトで技術シーズを公開し、オープンイノベーションにも積極的に取り組むという。別所氏は「ホンダは人を研究するという発想で、世の中をもっと便利にしたいという思いと得意なアジャイル開発で、これからも顧客に喜ばれるようにイノベーションを起こしていきたい」と講演を締めくくった。
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