切り口を変えて生産現場に目を向けると、例えば金型などの技術者は高齢化が進んでいることが多い。シミュレーションなどによって精度はかなり高くなっているが、ベテラン技術者の経験値が必要なケースも多く、技術承継が課題となっている。急を要する場合には即戦力となる経験豊富な技術者の採用もあるが、特にニーズが高いのは、その会社の技術を学びながら、長期的に活躍してくれる技術者だ。技術と経験が組み合わさっている世界であることが、このような人材のニーズを生み出していると考えられる。
そこで重要になるのは基礎的な技術や知識だ。電気、電子、情報といった世界はどんどん新しいテクノロジーが登場し、それをいかにキャッチできるかということも自分の価値を高めることにつながる。しかし機械系は、根幹となる要素技術に大きな変化はない。「『要素技術や基本的な知識が身についていない若い機械系技術者が増えている』という話を聞いたことがあります。ツールが便利になったおかげで仕事としては成り立ってしまうのですが、なぜそうなのか、変えたらどうなるのかなど、深めたり応用したりすることができないのです」と関寺氏。ツールは仕事を効率化してくれるが、基礎をしっかり身に学んでおくことは、やはり重要なのだ。
一方、機械系ならではの強みもある。自動車はデザイン重視。かつ、室内空間を広くするためには、限られたスペースにいかに車載機器を収めるかという課題が常にある。カメラやレーダーなど、かつての自動車では使われなかったものも積み込まなければならない。プラットフォームを共通化する流れもあり、制約は厳しい。
機械系技術者は、多かれ少なかれ、限られたスペースに入る機器を作るという経験をしているのではないだろうか。機器のサイズや形ばかりではなく、調達部品のコスト、品質や生産など、総合的に考えるという立ち位置を知っているのは、機械系技術者の強みだろう。
これからの機械系技術者のあり方について、「機械系の何らかの技術で強みを持ちつつ、幅を広げるようなスタンスが必要になると思います。プラスαの知見や、今後進みたい方向などを明確に持っていないと厳しい時代になっています」と関寺氏。自分の価値を高めるポイントと言えそうだ。
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