トヨタから専務と常務が消える、未来のモビリティ社会を「リアルの世界」で実現製造マネジメントニュース

トヨタ自動車は2018年11月30日、2019年1月1日付で実施する役員体制の変更と組織改正、人事異動を発表。役員体制の変更では、これまであった専務役員と常務役員、常務理事などの役職を廃して、専務役員を「執行役員」、常務役員、常務理事、基幹職1級・2級、技範級を「幹部職」とし、会社組織の階層数を削減する。

» 2018年12月03日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 トヨタ自動車は2018年11月30日、2019年1月1日付で実施する役員体制の変更と組織改正、人事異動を発表した。役員体制の変更では、これまであった専務役員と常務役員、常務理事などの役職を廃して、専務役員を「執行役員」、常務役員、常務理事、基幹職1級・2級、技範級を「幹部職」とし、会社組織の階層数を削減する。一方、組織改正では各カンパニー内の部組織をまとめる「領域」を新設しつつ、部の再編や統合も行う。これらの施策により「経営のスピードアップ」と「人材育成の強化」をさらに進めたい考えだ。

 常務役員から技範級までを1つにまとめた幹部職については、若手、ベテランにかかわらず、本部長、副本部長、領域長、工場長からグループ長までの幅広いポストに適材適所で配置。その時々の経営課題に対応するとともに、現地現物での人材育成を強化する。また、新たな執行役員は自らが現場に入り、幹部職、メンバーとともに、未来のモビリティ社会に向けたさまざまな構想を「リアルの世界」で実現していくことを目指すという。

 新任の執行役員としては、新たな組織体制でTPS本部と生産企画本部の本部長を務める朝倉正司氏、新興国小型車カンパニーのプレジデントと兼任する形で中国・アジア本部の副本部長に就任する前田昌彦氏、事業業務部や営業業務部、KD事業部、販売支援部を担当する宮崎洋一氏が就任している。

 なお、2018年1月1日付の人事異動で、トヨタ自動車の生え抜き女性社員として初の役員起用となったLexus International エグゼクティブバイスプレジデントの加古慈氏は、新たな体制における幹部職にとどまるため“役員”からは外れる。担当も、先進技術開発カンパニーに新設される材料技術領域の領域長になる。

 組織改正後の組織数(部組織)は220部となる。改正前が239部なので1割近い数の部を廃止、再編したことになる。

「超二流」が縦横無尽に活躍できる企業風土をつくる

 トヨタ自動車 社長の豊田章男氏は、今回の役員体制の変更について「今、『CASE』と呼ばれる新しい領域での技術革新が進む中で、クルマの概念が大きく変わろうとしている。これからのクルマは、町とつながり、あらゆるサービスとつながることによって、社会システムの一部として、人々の暮らしをより豊かなものにすることが期待されているのだと思う。そのためには、未来のモビリティを『コンセプト』ではなく、『リアルの世界』で普及させること、すなわち『実現する力』が必要になる。トヨタの強みは、クルマの開発、生産、販売からアフターサービスに至るまで、『もっといいクルマ』を目指し、ベターベターの精神で、『リアルの世界』で、日々改善を続け、技術革新を呼び込んできた『実現力』にあると考えている。今回の制度改革は、階層を減らすことによって、これまで以上のスピードで、即断、即決、即実行できるトヨタに生まれ変わるためのものだ。役員が未来のモビリティ社会を構想し、方向性を決断する。そして、役員自らが現場に入り、幹部職、メンバーとともに現地現物で、その構想を『リアルの世界』で実現していくことを狙いとする」と説明する。

 また豊田氏は、役員体制の変更や組織改正の狙いについて、プロ野球の西鉄ライオンズで監督を務めた三原脩氏の「超二流」という言葉を引用して説明した。「これだけは誰にも負けないという一芸を持っている。ひたむきにがむしゃらに努力を続け、ここぞという場面で力を発揮し、チームを救う。そんな選手を『超二流』といって、三原監督は大切にされたそうだ。自分は二流だと思うからこそ、絶えず技能や技術を磨き、ベターベターの精神で努力を続ける。そして、仲間や部下が迷った時、うまくできない時には、自らやってみせてあげられる。こうした日々の繰り返しの中で人間力も磨かれ、一芸に秀でたその道のプロや、現場のリーダーに育っていくのではないだろうか。激動の時代を生き抜き、持続的に成長し続けるためには、その時々の経営課題に対し、その時々に必要となる一芸をもったその道のプロが、年齢や学歴に関係なく、縦横無尽に活躍できる企業風土をつくることが何よりも大切だと考えている」(豊田氏)。

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