基調講演では、シンクロンでCMO(最高マーケティング責任者)を務めるGary Brooks(ギャリー・ブルックス)氏が登壇。従来の製造業が行っていた故障対応型のアフターサービスから、予知保全などの稼働時間を最大化するサブスクリプション型アフターサービスへの移行が進みつつあることについてさまざまなデータを用いて示し、リカーリングビジネスへの転換を同社が支援することを強調した。
同社では、世界の製造業企業200社とその先の顧客企業100社に対して、「自社が製造する、または使用する製品の稼働時間最大化」に関するマーケティングリサーチを実施し、独自の調査結果を得たとする。その調査結果によると、98%の顧客が「稼働時間の最大化を保証するサービス契約を望んでいる」ことや、また82%のメーカーが「顧客から稼働時間最大化の提供を求められていると考えている」と回答したという。
しかし、「自社は稼働時間最大化のサービス提供ができる立場にある」と回答したメーカーは25%しかいなかったという。Brooks氏はこの現状について「多くの顧客が望んでいると分かっているにも関わらず、ほとんどのメーカーが稼働時間最大化のサービス提供に対応できていないと回答するのは興味深いことだ」とコメント。また、57%の顧客が「稼働時間を最大化できるのであれば追加コストを支払っても良い」と考えているという。
そこで同社は各界の専門家と協議したうえで、現在および未来のアフターサービスを次のように描いたとする。現在主流となる「Reactive(反応的な)」「Preventive(予防的な)」アフターサービスは製品がIoT(モノのインターネット)に対応していないため、故障発生時もしくは定期的なスケジュールに沿って部品交換を行う。この手法は、保守部品の在庫コストやメンテナンスコストの低減を主眼としていた。
現在、先進的な一部企業では「Predictive(予報的な)」なアフターサービスを提供し始め、そして将来では「Proactive(率先的な)」アフターサービスが求められるという。これらのアフターサービスでは、IoT活用により製品稼働状況のリアルタイム把握が可能になるため、稼働状況に応じた保守契約で包括的なコスト低減を図ることができる。Proactiveアフターサービスでは、メーカーは稼働時間最大化の価値を訴求するようになるという。
Brooks氏は「シンクロンはロードマップの全段階にフィットするソリューションを用意している」と語る。特に同社では、PredictiveやProactiveアフターサービスに対応する新製品「Syncron Uptime」の開発を進めている。同製品は、既存のメンテナンスシステムやIoTプラットフォームなどと連携し、稼働状況の可視化や予測機能を提供することで予知保全を実現するクラウドソリューションだ。現在、先行顧客とともにベータテストを進めているとし、2019年春頃の正式リリースを目指しているという。
また、Brooks氏はMONOistの取材に対して、サービタイゼーションを推し進める企業とそうでない企業が二極化しつつあることを指摘。「サービタイゼーションは売上や収益の改善を狙うチャンスだ。サービタイゼーションに対応しない企業は衰退の道を描くようになるだろう」と強く主張した。
Brooks氏は、欧米において「Comfort as a Service」といった冷暖房や空調器具のレンタル型ビジネスが浸透し始めていることや、ポルシェなどの高級車メーカーが自社の車両をサブスクリプション契約で利用できるビジネスを始めたことを例示し、これらサービスでは機器稼働率向上が非常に重要な要素だと認識を示す。
「法人向け(B2B)メーカーだけでなく、民生向け(B2C)メーカーにもサービタイゼーションは顧客に対して革新的な価値を提供する源泉になる。これから先の10年でアフターサービスに大きなシフトが起こるだろう」とBrooks氏は語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.