多品種少量生産を限りなく自動化に近づけるオムロン綾部工場の取り組みオムロン 綾部工場レポート(後編)(3/4 ページ)

» 2018年09月11日 11時30分 公開
[三島一孝MONOist]

モバイルロボットによる自動搬送でリードタイム80%削減

 「interactive(人と機械の協調)」として取り組んでいるのが、モバイルロボットによる自動搬送システムである。工場などではワークの搬送などにベルトコンベヤーなどを使うケースが多いが、コンベヤーを設置すると工場内のレイアウトが決まってしまい、柔軟な生産体制を構築するのが難しくなる。多品種少量生産ではセル化なども進んでおり、“水すまし”と呼ばれる搬送台車などを使う場面も多かった。それらの置き換えを狙ったのがモバイルロボットによる自動搬送システムである。

photo モバイルロボットによる自動搬送システム(クリックで拡大)

 同自動搬送システムはMES(製造実行システム)のミラーシステムを作り、そのミラーシステムとロボットを通して作成した構内地図情報、フリートマネジメントシステムを組み合わせることで実現。作業指示が入れば、モバイルロボットはステーションと呼ばれる目的地から目的地へとワークを運ぶ。基本的にはステーションにはトリガーになるようなモノやマークを用意し、それをセンシングすることで、自動で荷物の積み下ろしも行えるようにしている。

photo 荷物の積み下ろしも自動で行う(クリックで拡大)

 現在、綾部工場では生産ラインから出荷検査場への搬送と、出荷場からゲートへの搬送などに活用。従来は、人手で行っていたためにある程度たまったときにまとめて送ることが多く、滞留時間が発生していたが、モバイルロボットを活用することで随時搬送することが可能で、作業を遅滞なく進められるようになった。搬送前後の工程のリードタイムだけで見ると80%の削減が実現できたという。「現在は一部で適用しているだけだが、今後は全フロアでの導入を目指し、拡大を進めていく」(説明員)は活用の幅を広げていく方針である。

知能化の元祖である「環境あんどん」

 「intelligent(知能化)」についてはさまざまな取り組みを進めているが、2009年から取り組み、外部への提供例などもあるのが「環境あんどん」である。環境あんどんは、工場内の生産性に関する情報やエネルギーに関する情報を一元的に集めて表示するダッシュボードのような仕組みである。

※)関連記事:オムロン逆転の発想、「カイゼン」と「省エネ」は同じことだった

photo 環境あんどんの画面(クリックで拡大)出典:オムロン

 環境あんどんで使用エネルギーがラインごとなどに見えるようになったことで、クリーンルームの生産原単位電力や印刷工程のブースなどの電力使用量を半減することに成功。さらに、クリーンルームの消費エアー量やクリーン環境のパーティクル量などの削減にもつながったという。「見える化することが気付きにもつながる。省エネだけでなく品質や環境保全などにも貢献している」(説明員)としている。

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