1個から個別製造できる複合装置を開発、筐体の3Dプリントから基板実装まで3Dプリンタニュース(1/2 ページ)

慶應義塾大学は、科学技術振興機構(JST)発の研究開発成果を紹介する「JSTフェア2018」(2018年8月30〜31日、東京ビッグサイト)において、卓上でIoTデバイスを1個から製造可能とする複合装置「FABRICATOR(ファブリケーター)」を披露した。

» 2018年08月31日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 慶應義塾大学は、科学技術振興機構(JST)発の研究開発成果を紹介する「JSTフェア2018」(2018年8月30〜31日、東京ビッグサイト)において、卓上でIoTデバイスを1個から製造可能とする複合装置「FABRICATOR(ファブリケーター)」を披露した。

photo 慶應義塾大学が披露した複合装置「FABRICATOR」(クリックで拡大)

 「FABRICATOR」は、IoTデバイスに欠かせない電子回路製造のための複数のプロセスと、3Dプリンティングによる外装のパッケージングを1つの装置に統合し、卓上サイズに収めた装置である。

 従来、電子回路の製造において、複数のプロセスを連結させる場合、異なる機械を並べ、その間に搬送機構を設ける必要があり、大きな空間が必要だった。「FABRICATOR」は、特許出願済みの「回転切り替え式ヘッド」と「逆さデジタルステージ」を組み合わせることで、同様のプロセスを卓上でコンパクトに実現することを可能にした。

 回転切り替えヘッドでは、3Dプリンティング、吸着式のピックアップによるチップマウント、はんだの塗布、ヒートガンによるスポットリフローなどの作業を切り替えながら行える。ハンドの切り替えなども行えるようにしており、作業の自由度を高めている。「逆さデジタルステージ」にあらかじめ、搭載する部品や基板などをセットしておく必要があるが、基板実装を行ったハードウェアデバイスを2時間半で全自動製造できる。

photo 回転切り替えヘッド(上部分)と逆さデジタルステージ(下部分)(クリックで拡大)

 6つの異なるプロセスをユーザーが自由にカスタマイズして使うことができる仕様にもなっており、IoTデバイスの製造以外にも、異なる方式の3Dプリンティング、さらには細胞プリントや化学反応プロセス、フードプリンティング分野の研究などにも活用可能だとしている。

 開発を行う、慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 特任准教授の相部範之氏は「もともとの発端はIoTデバイスなどで必須の基板実装を簡略化できないかというところからだった。基板実装を卓上サイズで簡単に自動で行えるものを作る中、3Dプリントにより筐体も一緒に作ることができないかと考え、現在の形になった」と語る。

photo 実際に製造したデバイス。スイッチを押すとLEDが光るというシンプルなものだが、基板実装と筐体を一貫して自動生産し、実際に問題なく動作するという(クリックで拡大)

 将来的にはこの「FABRICATOR」を販売することを目標としており「500万〜600万円程度の価格に抑え、FabLabやメイカーズスペースなどで導入できるようにしたい」と相部氏は考えを述べる。加えて「機械メーカーとの協業で製品化につなげるケース、キットで販売するケースなどさまざまなパターンで製品化への道を探っている。キットであれば2019年、完成品としての販売は2020年頃を目指している」(相部氏)としている。

 そのための課題としては「1つは歩留まりや精度の問題がある。精度向上に向けてはFPGAを活用した画像認識技術を採用することなどで、高めていく。また、オープンソースコミュニティーの力を最大限活用できるようにしていきたい。公開できるものはできる限り公開していく」と述べている。

 これらのオープンソースコミュニティーを活用して開発を進めようとしているのが、この「FABRICATOR」の制御部である。

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