今後、リチウムイオン電池メーカーは過剰供給と材料高騰の板挟みに悩まされるだろう。その中で優勝劣敗も進んでいく。2025年時点での勝ち組企業を問われれば、最大の市場規模を持つ中国の中でもCATL(Contemporary Amperex Technology)になるのではないか。中国政府の後押しで中国各社は増産をアナウンスしているが、その中でも中国地場の自動車メーカーとの取引が多くあるCATLに分がある。
それでは、これまで有力とされてきた日本や韓国のリチウムイオン電池メーカーは負け組になるのかというとそうでもない。パナソニックのように、トヨタ自動車やテスラなど複数の自動車メーカーと提携している場合にはチャンスがある。サムスンSDI(Samsung SDI)やLG化学(LG Chem)も同様に優位なポジションにあるだろう。
EVに搭載するリチウムイオン電池のサプライチェーンにも注目しておくべきだろう。車両に搭載する電池パックは複数の電池モジュールから構成されており、この電池モジュールも電池セルを複数つなげたものとなっている。今後EV市場が拡大する中で、自動車メーカーは電池パックに加えて、電池モジュールも自社の傘下に組み入れていく可能性があるだろう。
なお、日本の自動車メーカーがEVで出遅れているという意見がある。しかし、業界に先駆けて「リーフ」を展開してきた日産自動車はもちろんそうではないし、出遅れという意味でやり玉に挙げられているトヨタ自動車も、現在取り組んでいるEV開発の方向性はおおむね正しいと考えている。現時点で遅れていたとしても、今後キャッチアップしてくることは間違いない。
Richard Kim(リチャード・キム) IHS Markit Automotive プリンシパル・リサーチ・アナリスト
リチャード・キム(Dr.)はサプライヤーソリューションを担当するプリンシパル アナリスト。主なリサーチ領域は電機・電子コンポーネントのテクノロジー予測。専門領域および自動車産業に関する経験から、自動車メーカーやグローバルに展開する自動車部品サプライヤーなどに対して、競争力のあるインテリジェンスと戦略的な産業分析を提供している
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.