協働ロボット市場はまだ立ち上がったばかりだが、安川電機でもさらなるニーズを満たすためにラインアップ拡大に取り組んでいくという。
ラインアップ拡大の動きでは「まず可搬質量のバリエーションを増やしたい。重い方向にも軽い方向にも増やす」と西邑氏は述べている。
さらに機能を拡張する取り組みでは、まず「移動」に取り組むという。「AGV(無人搬送車)に協働ロボットを積載し、移動させるような取り組みは、ロボットメーカー各社が取り組んでいるが、安川電機でも進めていく。既に2017年の国際ロボット展ではデモを披露している。ただ、AGV搭載タイプの前に、手押しでの可搬型の協働ロボットをリリースする予定だ」と西邑氏は述べる。
協働ロボットのハンドキャリータイプについては「既に開発はほぼ完了している」(西邑氏)とし、2018年中に市場投入する計画だとしている。
技術開発面では「安全機能にまだまだ進化の余地がある」と西邑氏は述べる。
現状の協働ロボットの安全機能は、人に当たってある程度の力がかかったら止まるというものだ。センサーと制御を組み合わせることでより安全に止めることも可能となる。さらに画像センサーなどと組み合わせれば、当たる前に止められる。「もっと踏み込んで理想をいえば、当たりそうになったら避けて作業を続けるということまであり得る。これらのセンシングと制御を組み合わせた安全性と作業効率の両立に取り組む余地が大きい」(西邑氏)という。
西邑氏は「安川電機としては協働ロボットの投入が他社よりも遅れたという認識がある。『MOTOMAN-HC10』を投入したことで、何とか後れを取り戻す体制ができたという状況だ。ただ、協働ロボット市場はまだまだ黎明期で、普及のためにはさまざまな要素の改善が必要になる」と伸び代を強調する。
その1つとして「コストの改善」も西邑氏は挙げる。「協働ロボットが最終的に人の置き換えを狙うとすると、既存の産業用ロボットに対してコスト競争力を発揮するのではなく、現在工場などで働いている人のコスト競争力に迫っていかなければならない。工場内作業における人のコストパフォーマンスは非常に高く、これに近づけていくのは大変なことだが、挑戦をし続けていく」と西邑氏は述べる。
そして「安川電機は産業用ロボットでは溶接用途で先行し大きな市場シェアを獲得することができた。協働ロボットでももっと自由に使える環境を作り、キラーアプリを見つけることで産業用ロボットと同様の存在感を確立できるようにしたい」と西邑氏は今後の抱負を語っている。
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