インテルが画像認識ソフト開発ツールを無償提供「IoTの“I”は“Eye”」人工知能ニュース(1/2 ページ)

インテルは2018年6月28日、東京都内で「インテル インダストリアル IoT ソリューション DAY」を開催。「IoTの“I”は“Eye(目)”ではないかと思うほどに、画像認識技術がより重要になっている」(同社)とし、画像認識ソフトウェアの開発ツール「OpenVINOツールキット」を無償で提供するなどしている。

» 2018年06月29日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 インテルは2018年6月28日、東京都内で「インテル インダストリアル IoT ソリューション DAY」を開催した。イベントの冒頭に登壇した、インテル米国本社でIoT営業本部 ディレクターを務めるトリッシュ・ブロムフィールド(Trish Blomfield)氏は、IoT(モノのインターネット)、エッジコンピューティング、AI(人工知能)という3つのメガトレンドに注目していること説明。「IoTが広がるとネットワークへの負荷が高まってしまうため、エッジコンピューティングが必要になる。そして、エッジコンピューティングを行う上でAIは最適なソリューションとなる」(ブロムフィールド氏)という。

インテル米国本社のトリッシュ・ブロムフィールド氏 インテル米国本社のトリッシュ・ブロムフィールド氏

 3つのメガトレンドに対してインテルは「IoTのためのコンピューティング」「負荷の集約」「ビデオとAI」という3つの対応策を用意している。IoTのためのコンピューティングでは、同社のプロセッサ製品群に加えて、TSN(Time Sensitive Network)をはじめ各産業分野で処理性能を高められるような機能を提供していく。負荷の集約では、仮想化によってバラバラになっているものを集約していく。ブロムフィールド氏は「工場で用いられているPLCやHMIなどを仮想化技術で集約すれば、より高度な制御が可能になる」と説明する。そして3つ目が、画像認識技術を中核としたAIとなるビデオとAIだ。「IoTの“I”は“Eye(目)”ではないかと思うほどに、画像認識技術がより重要になっている」(ブロムフィールド氏)。そのためにインテルは、アルテラ(Altera)やモビディウス(Movidius)などを買収したのであり、2018年5月に発表した「OpenVINOツールキット」も役立つとした。

 さらに、産業別の課題を解決するソリューションキットとなる「IoT マーケット・レディ・ソリューション」も用意しているという。

長篠の合戦はIoT活用に通ず

インテルの張磊氏 インテルの張磊氏

 続いて、インテル 執行役員 インダストリー事業本部長の張磊氏が「IoT時代のテクノロジー」をテーマに、製造業がIoTやAIにいかに対応すべきかについて講演した。

 張氏は「IoTもAIも言葉としては当たり前になりつつあるが、それらを使って工場が変わったかというとそうではない。IoTやAIという技術はあくまで手段であり、どういうビジネス目的を成し遂げたいかが重要だ。IoTだからとにかくデータを集めてから考えようという姿勢だとうまくいかない。世界と比較しても日本は既に多くのデータを持っているが、そこからどうしていくかが問われている」と強調する。

 その上で製造業の変革の促進要因として「市場要因」「セキュリティリスクの増大」「人的要因」「破壊的テクノロジー」の4つを挙げた。日本で特に注目される動向として「市場要因では、大企業よりも日本の製造業の強さを支えている中小企業に注目している。IoTを活用することで、その強さをシェアできるのではないか。人的要因は日本が今一番困っている問題だが、労働の数よりも、熟練者のスキルを次にどうつなげて行くかが重要だ」(張氏)という。

製造業の変革の促進要因 製造業の変革の促進要因(クリックで拡大) 出典:インテル

 変革とイノベーションの注目ポイントで挙げたのが「EaaS(Everything as a Service)」と「ブロックチェーン」だ。張氏は「インテルはエネルギー関連でもさまざまな取り組みを行っているが、サービスプロバイダーとしての電力企業の進化は著しい。電力にとどまらず、さまざまなものがサービス化していくだろう。またブロックチェーンというと仮想通貨のイメージが強いかもしれないが、複数社が協力してサービスを作り上げていくときにブロックチェーンという情報を安全にやりとりする枠組みは役立つ。例えば、物流業界は人手不足が課題になっているにもかかわらず、物流トラックの積載率は平均で30〜40%にすぎない。ここでブロックチェーンを活用すれば、さらなる効率化が可能になるはずだ」と説明する。

 また、新しい工場の在り方として、インテルの半導体工場の事例を紹介した。張氏自身もかつては同社の中国工場に勤めていた。「ウエハー工場はほぼ全てが自動化されており、工場内に人がいることはほとんどない。ウエハーやウエハーケースのハンドリングもほぼ全てが自動化されており、RFIDやカメラでウエハー1枚1枚を識別している」(同氏)という。

新しい工場の在り方として示したインテルの半導体工場の事例 新しい工場の在り方として示したインテルの半導体工場の事例(クリックで拡大) 出典:インテル

 また半導体製造装置のコントローラーは産業用PCで統合制御されており、産業用PC間はユニバーサルバスでつながっている。そしてこのユニバーサルバスとつながる製造実行システム(MES)によって管理される。そして、ICテスターの結果と各ダイの品質管理、物流に用いるトラックなどにも画像認識技術が用いられている。張氏は「ただカメラで撮影するだけでは意味がない。撮影データを分析するAIが重要だ」と語る。

 そしてこのAIの可能性を最大限に引き出すのが、インテルのさまざまなプロセッサ製品群と、その上で動作するライブラリ、フレームワーク、ツールといったエコシステムである。

インテルのプロセッサ製品群と、その上で動作するライブラリ、フレームワーク、ツールなどのエコシステム インテルのプロセッサ製品群と、その上で動作するライブラリ、フレームワーク、ツールなどのエコシステム(クリックで拡大) 出典:インテル

 張氏は最後に、織田信長が武田軍に勝利した長篠の合戦を例に挙げて「1つの戦場で3000挺もの鉄砲が使われたのは世界で初めてのことだった。鉄砲自体は既にあったが、その使い方を決めたのは織田信長であり、それが天下統一につながった。これと同じでIoTやAIも使い方が重要だ」と述べている。

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