Robert Boschの日本法人であるボッシュは、自動運転技術やパワートレーン、コネクテッドカーなど重点分野の取り組みを発表した。
Robert Boschの日本法人であるボッシュは2018年6月6日、東京都内で会見を開き、自動運転技術やパワートレイン、コネクテッドカーなど重点分野の取り組みを発表した。2018年の日本法人としての売り上げは、2017年比3〜5%増の成長を見込んでおり、自動車機器事業の成長や日系自動車メーカーとの取引拡大が業績をけん引するとしている。
日本法人ボッシュの2017年の売上高は前年比10%増の2950億円だった。日本国内の自動車生産台数の増加率を上回って推移しており、パワートレイン関連や先進運転支援システム(ADAS)の取引拡大が貢献したという。また、日本法人ボッシュでの日系自動車メーカーに対するサポートは、Robert Boschの業績にも寄与した。
Robert Boschのグローバルでの日系自動車メーカー向けの取引は2013年から年平均2桁の成長率で拡大している。2017年は前年比11%増となった。具体的な製品としては、パワートレインやADAS関連に加えて、カーナビゲーション製品やゲートウェイコンピュータが好調だった。
パワートレインに関して、会見に出席した日本法人ボッシュの代表取締役社長 クラウス・メーダー氏は、内燃機関とモーターが共存することを強調した。2025年にハイブリッド車と電気自動車(EV)が2000万台生産される一方で、ガソリンや軽油を燃料とする新型車が8500万台販売されるという見通しを示した。ASEANでは、9割近い車両が内燃機関を搭載するという。
これに基づいて、2019年には機電一体の駆動用モーター「eAxle」や電源電圧が48Vの駆動用バッテリーを量産する計画だ。一方、内燃機関に対しては、ディーゼルエンジンの環境性能向上に今後も取り組む姿勢だ。2018年4月には、走行距離1kmあたりのNOx排出量を、2020年に欧州で導入される規制値の10分の1まで低減する技術を発表。尿素還元型触媒をいかに冷やさないようにするか、いかに速く活性化させるかに重点を置いた技術だという。すでにダイムラーやBMWの乗用車に採用され、量産が始まっている。
複数の自動車メーカーが、ディーゼルエンジン搭載車の販売終了や、ディーゼルエンジンの開発・生産の中止に向かって動き出しており、政府による販売規制がアナウンスされている国もある。それでもRobert Boschがディーゼルエンジン技術に取り組むのは、乗用車の環境規制の達成に有効な手段の1つであり、大型の商用車や農業機械、建設機械、船外機など電動化が難しくディーゼルエンジンを必要とする製品が数多くあるためだ。
「農機や建機も排ガス規制が課されており、これからコモンレール化が進んでいく段階で、今後もディーゼルエンジンの技術のニーズがある。日本には世界でも高いシェアを持つ農機・建機メーカーが多く、環境規制が厳しい地域に強みを持つ。日本のボッシュとして彼らと取引できることは重要だ」(ボッシュ パワートレーンソリューション事業部 マーケティング&事業戦略部 課長の小西康正氏)
自動運転技術に関して日本法人のボッシュは、2017年末から政府が推進する自動運転開発プログラム「SIP-adus」に参加するなど、日本特有の交通環境に対応した開発に取り組んでいる。
自動運転車が高精度地図を基に自車位置を推定する技術では、インクリメントPと実証実験を実施した。ボッシュは、高精度地図のレイヤーの1つで、自車位置を特定するために道路の構造を記録した「ローカリゼーションレイヤー」の更新を容易にする仕組み「Radar Road Signature」を持つ。インクリメントPはダイナミックマップ基盤のデータを取り込んだ高精度地図にRadar Road Signatureを結合した自動運転用マップを作製。これを使用して公道での自動運転を成功させたという。
センサーによる自車位置の推定が難しい降雪地域に向け、衛星測位を利用した自車位置推定技術も開発を進めている。
自動運転車は、場面によってドライバーによる運転とシステムによる自動運転が混在するため、事故が起きた場合には責任の所在を明確にすることが求められる。事故発生時の車両の状態を記録し、事故後に分析するため、航空機のフライトデータレコーダーに相当する「イベントデータレコーダー」の搭載が日本も含めて義務化される見通しだ。
米国ではすでに乗用車やライトトラックを対象にイベントデータレコーダーの搭載が義務化されており、そこからデータを取り出して解析するツールを市販することも義務付けられている。Robert Boschは米国でイベントデータレコーダーの読み出しツール「Crash Data Retrieval」の展開と、事故データを解析するアナリストの育成に取り組んでいる。日本でも、2017年末からアナリストのトレーニングに対応しており、あいおいニッセイ同和損害保険や警察庁、科学警察研究所など向けにCrash Data Retrievalが採用されるなど実績を積み重ねているという。
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