「人とくるまのテクノロジー展2018」に出展した外資系大手サプライヤーのブースから、人工知能技術を活用した画像認識の取り組みを紹介する。
Robert Boschの日本法人であるボッシュは「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)において、2019年に量産する次世代のステレオカメラを世界初公開した。
高さや路面の傾きを「6D」で検知できる点と、ディープラーニング(深層学習)によるセマンティックセグメンテーションを採用した点が特徴となる。エネルギー効率の高い組み込みハードウェアIPによって実現した。また、ディープラーニングを使わない複数のアルゴリズムとも組み合わせており、精度と信頼性の向上につなげている。
展示したステレオカメラは、ディープラーニングを含めさまざまなアルゴリズムを組み合わせて、フリースペース(車両が走行可能な範囲)の検知精度を向上した。2つのカメラを利用した距離の検出やオプティカルフローによる移動体の検知、車線や光源の認識、物体の識別といったアルゴリズムを併用する。
フリースペースの検知は、運転支援システムや市街地での自動運転技術に必要になる。開発品は白線や路肩だけでなく、車道と歩道の境界があいまいな環境の検知に対応している。また、工事中で車線がパイロンなどで規制され、本来の車線を無視して走行しなければならない場面でも、走行すべきエリアを認識できるようにした。
車載カメラにAI(人工知能)技術を活用する取り組みは「人とくるまのテクノロジー展2018」に参加した他の大手サプライヤーのブースでも見られた。
ヴァレオジャパンは、クルマの向きをディープラーニングで識別するデモンストレーションを実施。ダイナミックレンジの広いメガピクセルカメラを用い、車両の前後左右どの面であるかを検知した。視野角190度の魚眼レンズのひずんだ映像でも学習可能だとしている。
ヴァレオの説明員は「クルマの向きの変化から動きを判断する技術は実際の環境に即した自動運転で必要になる。特に、人間が運転するクルマと自動運転車が共存する期間は必要だ」と車載カメラでディープラーニングを使う重要性を説明した。
「人間は誤って方向指示器の操作とは違う行動をとる場合がある。自車が自動運転で右折待ちをしている時、右ウインカーを出して進んできた対向車が右折しない可能性があるからといって、待ち続ければ後ろが渋滞する。先行車両の車体の向きの変化から右折したことが分かれば、自車も次の行動に移ることができる。この認識技術が不要になるのは車車間通信が完全に普及した時だろう」(ヴァレオの説明員)。
コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンは、機械学習によって歩行者の身体の向きや動作を識別する単眼カメラのデモンストレーションを実施した。顔の向き、上半身と下半身、左右の腕の動きなどから、車両の存在に気付いて立ち止まっているのか、クルマを停止させようとしているのか、歩きスマホに夢中なのかを判断する。
こうした技術により、歩行者の状態に合わせてドライバーに注意を促すことが可能になる。また、市街地の自動運転や運転支援において、車両が周辺環境を詳しく理解する上で役立つ。マルチファンクションカメラの機能の一部として搭載し、2020年に市場投入する。
コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン 日本OEM統括責任者の青木英也氏は「今回展示したのは車外の人間の状態を理解する技術だが、自動運転システムのレベルが上がると『ドライバーが何をしているか』を詳細に理解することが不可欠になる。人間への理解という点では、クルマの中と外で同じことが求められるといえそうだ」と語った。
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