コネクテッドカーに「完成」はない――ベクターコンサルティング特集「Connect 2018」(1/3 ページ)

Vector Consulting ServiceのChristof Ebert(クリストフ・エバート)氏に、自動車の開発プロセスはどのように変わっていくべきか、今後の在り方を聞いた。

» 2018年02月05日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 自動運転技術などによって、クルマの機能が飛躍的に高まっている。さらに、通信技術を活用することで、自動車以外の業界を巻き込んだ新たなサービスも生まれようとしている。Vector Informatik(べクター)のグループ会社であるVector Consulting Servicesでmanaging directorを務めるChristof Ebert(クリストフ・エバート)氏に、自動車の開発プロセスはどのように変わっていくべきかを聞いた。

ITとOTの歩み寄りを

Vector Consulting ServicesのChristof Ebert(クリストフ・エバート)氏

MONOist 自動車に関してどのような業務を担当していますか。

エバート氏 主に3つのテーマに携わっている。1つ目はカーエレクトロニクスに起きている大きな発展だ。コネクティビティや自動運転、電動化、サービス化の4分野で進化が求められている。車載イーサネットや新しいアーキテクチャの導入が技術的なトピックスだ。

 2つ目はOT(制御システム)とIT(情報システム)の融合に向けたエンジニアトレーニングだ。どちらかしか分からない技術者が多い中、両方に対応できる人材を育てるため、社内だけでなく、大学や自動車メーカー、サプライヤーにも知見を提供している。3つ目がセキュリティやリスク拡大に対応した開発プロセスの改善だ。

MONOist ITとOTのエンジニアは、それぞれどんな課題を抱えていますか。

エバート氏 ITとOTの世界は、大学での学びから実際のビジネスまで距離がある。業界標準や規格がそれぞれ連携していないので知識を互いに深めるべきだ。使う言葉や考え方の違いもある。組み込みエンジニアは、まずシステムがあって、アーキテクチャがあって……という分散型だ。分散型は共通でも、ITはコンポーネントの追加に強みがある。これはOTとの大きな違いだ。

 2つの陣営はクルマの中と外を連携させるため協力しなければならない。クルマがバックオフィスとつながるようにするということは、閉じた世界から出すということだ。車載ソフトウェア向けの開発プロセスであるAutomotive SPICEやCMMI(Capability Maturity Model Integration:能力成熟度モデル統合)といった取り組みの融合を大学から始め、学生が社会に出た後も歩み寄る必要がある。

MONOist トピックスとなっている新しいアーキテクチャとはどのようなものですか。

エバート氏 「サービス指向アーキテクチャ(SOA:Service-Oriented Architecture)」と呼ばれるものだ。元はITの用語だが、自動車業界にとっては、ECU(電子制御ユニット)と機能が1対1だったのが柔軟なサービスに置き換わっていくということを意味する。

 ITと全く同じではない。ITではサービス指向アーキテクチャを取り入れる対象はコンピュータだったが、自動車ではECUになる。ハードウェアの構成はクルマごとに固定されている上に、一瞬も止まってはいけないリアルタイム性も要求される。設計は簡単ではない。

 従来はブレーキやステアリング、パワートレイン、運転支援システムなど色々な機能を個別に作っていたが、サービスはそれぞれの機能を包含する緩やかな概念になる。サービスをモデリングするためのメソッドは、ITの世界から学ばなければならない。

 関連する取り組みの1つの例は次世代AUTOSARである「AUTOSAR Adaptive Platform」だ。基盤となるOSの上のレイヤーに、機能ではなくサービスを置いてサービスごとに制御できるようにする。

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