さて、今日も矢面さんが印出さんを訪ねてきましたよ。
印出さん、こんにちは。ちょっと相談がありまして……。
あら、矢面さんはいつも相談じゃないの。
いや、実は今回はちょっと違うんです。グーチョキパーツにもIoTを活用した新しいビジネスを創出する「IoTビジネス推進室」というのができまして、私が兼任することになったんです。
まあ、すごいじゃない。やりがいがあるでしょう。
今までいろいろ印出さんに教えてもらってきたことが評価されたのはうれしいんですが、生産技術だけでなくて、IoTでビジネスを生み出すとか全くピンと来なくて……。そもそも部品メーカーがIoTで新しいビジネスとか生み出せるんですか。
おやおや、いろいろ忘れているんじゃない? 以前「製造業のサービス化」の話をしたことがあったわね。これを当てはめてみるというのが1つでしょう。
連載の第6回や第7回あたりで「製造業のサービス化」について、さまざまなトピックを取り上げました。
まずは製品がIoT化することによって常にデータを収集できる仕組みが生まれることから、故障などを予知する「故障予知」やそれによる「予防保全」などが可能となります。
さらに、GEなどの航空機エンジンの取り組みでは、「エンジンを売る」から「エンジンが稼働した出力分だけに対価を払う」とした「パワーバイジアワー(Power By The Hour)」という契約への切り替えが進んでいます。さらにGEではこの「パワーバイジアワー」を実現するためのデータを分析することで、最適運転などのコンサルティングサービスなどへと発展させ新たなビジネスを構築しています。
これらの動きは部品メーカーでも同様です。ドイツを中心に部品メーカーでもクラウドによるデータ収集基盤を独自に展開するケースが増えています。自動車部品大手のRobert Bosch(以下、ボッシュ)は2016年に「Bosch IoT Cloud」を発表し、IoTによるデータ収集と分析により、新たなサービス展開を構築する取り組みを進めています(※)。
(※)関連記事:ボッシュがIoTクラウドをドイツに導入、「セキュリティの懸念を取り除く」
同じくドイツでは、自動車用部品や産業機械用の軸受部品などを展開するSCHAEFFLER(シェフラー)なども独自のクラウドデータ基盤「SCHAEFFLER Cloud」などを展開しています。自社のベアリング製品のセンシングを起点とし、これらのデータの収集と解析します。これを基にした稼働監視と予知保全と最適化というサイクルを実現しています。さらにこれらのサイクルで得られた知見から状態監視や修理、潤滑サポートなどの保守・メンテナンスサービスの高度化に取り組む方針なども示しています。
部品メーカーが自分たちで独自のクラウド基盤を持つんですか。われわれにはハードルが高いなあ。
まあ、これは、理想の形といえるかもしれないわね。ただ、特にドイツでは自分たちでクラウド基盤を持ち、そこにデータを集めて新しいサービスを用意するという仕組みが1つの標準形のようになってきているわ。部品メーカーを含めて多くの企業が「データ」を新たな価値の源泉だと捉えていて、そこを確保するという動きね。
そういわれると、われわれもやらないといけないような気になってきます。
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