世界の3Dデータ活用の動きは、日本よりはるかに進んでいる。日本機械学会のVE/VR講習会において、テスラモーターズのモデルXを丸ごとCTスキャンしてCADモデルに変換するビジネスや、認証に関する最新動向が語られた。
自動車業界において「設計認証をバーチャルで」という動きが着々と進みつつある。3Dデータをベースにしたバーチャルテスト認証に対応できなければ、世界市場で戦えなくなる可能性がある。
日本機械学会 設計工学・システム部門の企画により開催された講習会「VE/VRを用いた設計・開発・ものづくりの新しい検討手法の紹介」(開催日は2017年10月17日)の中から、VRに関する最新テクノロジーと世界のバーチャルテスト認証の動きを紹介する。
車両フルスキャン技術を紹介したのが、Caresoft Global(ケアソフト)のMathew Vachaparampil氏である。ケアソフトは大手自動車メーカーに向けてエンジニアリングサービスおよびソフトウェアを提供する企業で、米国に本部を置き世界中に拠点を設ける。2007年に設立され、現在、従業員数は約1300人である。またインドの数カ所の拠点でIT関連の開発を行っている。同社はデトロイトを本拠地とするSakthiグループの系列企業であり、自動車関連のグループ企業にはシャシー、ドライブトレインなどを設計、製造するSakthiオートモーティブがある。
図1はテスラの電気自動車「モデルX」の内部を高エネルギーX線スキャンにより可視化した画像だ。この技術では、非破壊で車両丸ごと1台をスキャンすることができる。そのため迅速に車両内部を本来の位置関係のまま分析することができる。もともとは軍事用ミサイルなどの解析に使用されていた技術だという。
材料の密度によってX線の透過率が変わるため、強度などを変化させることで材料を特定できる。モーターやバッテリー、ハーネス、ファブリックなどあらゆる形状を把握することが可能だ。全体的な精度は材料により異なるが100〜750μmになる。
車両全体のスキャンには3週間かかったという。講演ではX線源と検出器の間に自動車を置き、上下移動や垂直軸の回りに回転させたりしてスキャンを行う様子を見せていた。画像を合計1000万〜1500万枚取得して、それを基に3次元像を構築していた。
精度は材料によって若干異なる。密度がありX線が透過する材料の形状は、およそ500μm以下の精度になるという。プラスチックであれば750μmである。金属に挟まれたゴム材料などになるとX線では難しい。モデルXでは約5000パーツのうち200パーツ程度が撮影しづらいものだった。このように特定できない場合は、実際に分解して確認する。
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