ハノーバーメッセ2017では、第11回となる日独経済フォーラムが開催されたが、両国共通の大きな課題が「中小企業のIoT化」である。後編では、中堅中小企業のインダストリー4.0への取り組みの現状を紹介したパネルディスカッションの内容をお届けする。
ハノーバーメッセ2017(2017年4月24〜28日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において2017年4月26日、第11回となる「日独経済フォーラム」が開催された。毎年、日本とドイツの両国が関係するさまざまな経済トピックを取り上げているが、ここ数年は「インダストリー4.0」がテーマとなっている。前編では、両国政府のキーマンによる協力の進捗度と課題認識について紹介したが、後編の今回は、「インダストリー4.0―中堅企業における先進事例」をテーマとした、企業や団体などによるパネルディスカッションの内容をお伝えする。
※)関連記事:インダストリー4.0で深まる日独連携、残された“3つの課題”の現在地(前編)
パネルディスカッションは駐日ドイツ商工特別代表のマークゥス・シュールマン(Marcus Schurmann)氏がモデレーターを務め、シーメンス(日本法人)専務執行役員 デジタルファクトリー事業本部 プロセス&ドライブ事業本部 事業本部長 島田太郎氏、ドイツのMurrelektronikのアプリケーション&セールスサポート部門のトップであるヴォルフガング・ビーデマン(Wolfgang Wiedemann)氏、日本のロボット革命イニシアティブ協議会 事務局長の久保智彰氏、ドイツで中小企業向けの拠点「コンピテンスセンター」などをサポートするMittelstand 4.0-Kompetenzzentrumのスポークスマンであるベレンド・デンケナー(Berend Denkena)氏が登壇。それぞれの立場で日本とドイツのインダストリー4.0への取り組みを紹介した。
インダストリー4.0およびIoT活用について中小企業のIoT活用が大きな課題となっていることは前編でも紹介したが、実際に中小企業と触れ合う機会の多い登壇者の実感はどういうものなのだろうか。
中堅企業に位置するMurrelektronikのビーデマン氏は「インダストリー4.0を実現する中で、ショップフロア(工場側)とオフィスフロアをシステム面で融合していくことが望ましいが、現実的にはこれらをつないでいく作業は、技術的にも体制的にも大変だ。現実的に価値を生み出すのは難しいと感じているところが多いだろう」とインダストリー4.0実現に向けた苦労を述べる。
また中小企業のコンサルティングなども行うMittelstand 4.0-Kompetenzzentrumのデンケナー氏も「中小や零細企業は(ドイツでも)デジタル化を恐れているところが多い。こうした零細企業は経営者の年齢も高く、昔ながらの技術に誇りを持っており、新しい技術をわざわざ苦しい思いをして取り上げるのは嫌だと考えている。こうした感情的な面での障壁を取り除いていく活動が必要になる」と語る。
一方、RRIの久保氏は「イニシアチブとの連携などでさまざまな国の企業を見てきたが、中小企業に関する話題は全て同じだ。『関心はあるけれど何をやってよいのか分からない』というところが非常に多く、ITのツールといえばPCのみというところも数多く存在する。こうした企業は非常に高い理想を追い求めて足がすくんでしまっているところが多いが、順番に段階を踏んで進んでいけば、不可能な道のりではないといことを訴えてきている」と話す。
登壇者の中で唯一ポジティブな反応を示したのがシーメンスの島田氏だ。島田氏は「中小企業の人々と付き合う中で、1年前は恐れを感じているという人が多かったように思う。しかし、最近はこうした傾向が変わってきたように思う。『やってみよう』というポジティブな中小企業が増えてきた。こうしたエネルギーあふれる企業から出るアイデアは今までにない面白いものがある。これらを1つ1つ丁寧にサポートしていくのがシーメンスのようなインフラ企業の役割だと考えている」と述べている。
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