「コルミナプラットフォーム」は、データを収集、分析する基盤としての役割を担う。富士通が既に自社内のデジタル基盤として利用しているFTCP(Flexible Technical Computing Platform)と、異種環境を接続する標準プロファイルなどで構成される「つながる技術」に、IoTやAI技術などを加え、データの構造化や分析などを実現する。
今後は、コルミナプラットフォームと他社のソリューションやプラットフォームとの標準インタフェース機能も提供する予定。これによりサプライチェーン全体での設計から生産までの情報をつなげるようになる。さらに、同基盤を活用することでモノづくり企業の熟練工などが持つ、設計や製造、保守などに関する知識や知見の共有、人材の発掘やマッチングなど、企業間の協業などにもつなげる方針だ。「コルミナプラットフォーム」の提供予定時期は2017年7月以降としている。
「コルミナエッジ」は生産現場のさまざまな機器やセンサーとの接続を実現するエッジ端末を提供する仕組みである。他社のエッジプラットフォームとの連携を実現する機器やシステムを提供する他、エッジコンピュータ機器はグループ会社のPFUなどを活用し専用端末を提供することなども計画する。「コルミナエッジ」の発売予定時期は2017年度下期(10月)以降とする。
富士通では、これらを提供することで、製造業にとっては、新サービスの提供やサプライチェーンの高度化、マスカスタマイゼーションの実現、オープンイノベーションの実現、モノづくりノウハウの伝承などに貢献が可能だとする。
富士通 執行役員 産業・流通システム事業本部長 東純一氏は「将来的に製造業のビジネスモデルが変化し、製造機械やノウハウを一時的に貸し出すクラウド製造サービスのような世界が生まれるかもしれない。その時、あらゆる製造工程が、1つの情報基盤でつながるのが必須となる。日本の製造業が従来の強みを生かしつつ、そういうつながる環境を実現できるように支援していきたい」と述べている。
製造業に向けたIoTプラットフォームは2016年以降乱立しており、エッジに近い領域ではファナックや三菱電機などの生産財メーカーが、上位ではクラウド系のITベンダーなどが提案を進めている状況だ。これらのプラットフォーム同士の連携などが必要な状況も生まれているが「現状では話を進めているというステータス。優先順位としては実際に顧客企業が使っているプラットフォームや浸透度の高いものから早く連携が取れる状況にしていく。エコシステムを構築する方針なので、基本的には囲い込むことは考えておらず、オープンにやる」(東氏)という。
プラットフォーム間の差別化も難しい状況も生まれているが、東氏は「まずは、エンジニアリングクラウドと、AI、IoTやビッグデータ分析のセットを基盤を通してすぐに使えるということが特徴だ。加えて、既に富士通内で培ってきたノウハウがあり、設計のバーチャル化などモノを作らないモノづくりや、スーパーコンピュータ『京』を活用した解析技術など、さまざまな知見をプラットフォームに組み込めるということが差別化につながる」と述べている。
価格は、大手企業については既存のシステムと組み合わせた形でカスタムでシステムインテグレーションを行うとしているが、中小企業向けについては「現実的に中堅中小企業が使える価格帯ということで、20万〜30万円程度から利用できるようにしたい。製造業は、モノの流れを見ると今もさまざまな企業がつながっている状態で、情報基盤的にもつながることで、大手企業にとっても、中堅中小企業にとってもメリットを作り出せる」と東氏は述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.