設備投資に依存しないモノづくりを研究開発で支援――イデアルスターオンリーワン技術×MONOist転職(11)(2/3 ページ)

» 2017年05月08日 10時00分 公開
[西坂真人MONOist]

曲げられる太陽電池、次は「糸で編む」へ

 繊維にデバイス機能を持たせるためには有機材料しかない、ということで有機エレクトロニクスの研究開発に注力。“光で電気を作る”有機太陽電池事業と“力で電気を作る”有機圧電デバイス事業の2つがメインの開発事業となっている。

 現在、同社の売り上げの柱となっている有機薄膜太陽電池は、太陽電池を構成するp型半導体とn型半導体に有機材料を用いた塗布型の発電層をフィルムで形成。光を透過できるほどの薄さで折り曲げ可能なフレキシブル性のある太陽電池となっている。硬いシリコンで作る太陽電池と比べて非常に薄く軽量にでき、通路の屋根や窓への貼り付けなど、重量があるものでは設置しづらい場所を有効活用した発電が可能になる。

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 2012年1月にはJR東日本らと共同でJR日光線鶴田駅の通路屋根に有機薄膜太陽電池を設置したフィールド試験を実施。2015年4月にはJR福島駅の跨線橋に設置し、国内初の実用化を果たした。また2016年4月からは長野県や諏訪東京理科大学らと共同で、ブドウ栽培のビニールハウスに同社の有機薄膜太陽電池を使った発電装置のフィールド試験を開始。発電と栽培を両立した取り組みに注目が集まっている。

photo JR福島駅の連絡通路で実用化された有機薄膜太陽電池

 「非常に薄い有機薄膜太陽電池は、透過する光の波長を調整して光合成など作物の生育に必要な光だけ透過させながら発電することができる。この電力はハウス内の換気や生育調整などに使うLED照明の電力として利用される。窓に貼るタイプは発電効率や耐久性で改良を続けており、日本中の建物の窓に使われることを目指して開発している。このフィルム状の太陽電池は糸で編む繊維状太陽電池へのステップとして位置付けている」(表氏)

ウェアラブル市場のキーアイテム

 もう一つのコア事業である有機圧電デバイス事業だが、実はイデアルスターが世界的に注目されている技術がこの「塗布形成が可能な高機能高分子圧電材料」で、この技術の基本特許は同社が取得している。「簡単に説明すると『材料をキレイに並べて性能を高くする技術』。ノウハウが必要ない分、特許で守る必要がある。既に透明度の高い材料、耐熱性の高い材料、伸びや変形に強い材料などでも特許をおさえている」(表氏)。

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 この技術の応用は多岐にわたるが、2016年に開発したタイヤ内部での振動発電では、タイヤの内側に貼った高分子圧電材料のシートが運転時の振動で発電し、路面の状況をモニタリングするセンサーの無線用電源として利用できることを実証した。従来の高分子圧電材料では大きな変形により破壊されてしまうため、タイヤ内などの過酷な条件下での利用は不可能だったが、耐変形性能に優れた同社の発電シートは、さまざまな応用の可能性を広げている。

 また発電だけでなくセンサーとしての応用にも期待が寄せられており、電子聴診器などの生体情報モニターやロボットの触感センサー、構造物の劣化を監視するためのセンサーなどIoTアプリケーションへの展開も可能だ。

 「人工透析患者のシャント音をモニタリングすることにより透析中の急激な血圧低下を検出する装置も開発している。フィルム状で軽くフレキシブルな圧電材料は、今後のウェアラブル市場のキーアイテムになるだろう」(表氏)

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