矢野経済研究所が、国内コミュニケーションロボット市場の調査結果を発表。介護用途や、東京オリンピック・パラリンピックに向けた観光案内、多言語対応用途などでロボットの導入が進み、2020年度の国内市場規模を87億4000万円になると予測する。
矢野経済研究所は2017年3月28日、国内のコミュニケーションロボット市場に関する調査結果を発表した。同調査は、コミュニケーションロボットメーカーや研究開発企業、関連団体、関係省庁などを対象としたもので、同年1〜3月にかけて、面談や電話、電子メールによるヒアリングと文献調査を併せて実施した。
調査結果によると、2015年度の国内コミュニケーションロボット市場規模は23億8500万円(メーカー出荷金額ベース:以下同)で、前年度比279.9%と大きく伸長した。2014年の「Pepper」の登場からコミュニケーションロボットへの関心が高まり、2015年頃から相次いで実用化を目的とした製品の投入が進み、市場が急拡大した。
2016年度も継続して新製品が投入され、市場が本格的に立ち上がってきている。同研究所では、2016年度の市場規模を同165.2%の39億4100万円と見込んでいる。
2016年度に入って、日本医療研究開発機構(AMED)により、介護施設を対象とした大規模実証調査が実施された。この調査の結果が、コミュニケーションロボットの介護用途での課題を明らかにし、より有効な機能を追求する検討材料となることから、コミュニケーションロボット導入の呼び水になると注目されている。
また、同研究所では、コミュニケーションロボットを会話型、非会話(動作)型、会話/動作複合型の3タイプに分類して需要動向を分析している。
会話型は会話のみでコミュニケーションを図るもので、今後、会話技術が進歩し、自然で用途に応じた会話ができるようになると、個人向け/業務向けともに普及が加速すると見る。非会話(動作)型は、鳴き声や手足の動き、姿勢などで反応するタイプで、孤独感の解消や精神を安定させる手段の1つとして、介護施設や在宅介護でニーズが広がると考えている。
さらに、Pepperのような会話/動作複合型は、人の作業代替を目的として、ハード/ソフトウェア両面の機能が充実し、介護現場や案内/受付業務などにおいて、ニーズが高まると見る。
コミュニケーションロボット市場は今後、介護施設向けの需要拡大とともに、東京オリンピック・パラリンピックに向けて交通機関や各種施設で観光案内、多言語対応用途での導入が進むと期待される。2020年度まで市場は拡大し続け、その後の普及期に向けた足掛かりになるとし、2020年度の国内コミュニケーションロボット市場規模を、87億4000万円になると予測している。
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