さてそんな訳で、2016年8月に定まった仕様がCat.M1である。Cat.0とCat.M1を比較したのが表1だ。
Cat.0 | Cat.M1 | |
---|---|---|
通信速度 | 1Mbps/1Mbps | 1Mbps/1Mbps |
アンテナ本数 | 1 | 1 |
通信方式 | 半二重 | 全二重/半二重 |
送受信帯域 | 18MHz | 1.08MHz |
最大送信出力 | 23dBm | 20/23dBm |
表1 「Cat.0」と「Cat.M1」の仕様比較 |
通信速度は変わらず最大1Mbpsだが、最も大きな違いは送受信帯域である。Cat.0はもともとのLTE Cat.4と同じく18MHzの帯域を利用する仕様で、おそらくこれはCat.4のトランシーバーをそのまま流用できるから安価になる、という発想があったのだろうが、結果から言えばそれがむしろ災いしてモジュール価格が安くならなかった形だ。
そこでCat.M1では、帯域を10分の1の1.08MHzまで削った。これにより、モデムのコストを大幅に削減できるようになった。もともとCat.0では、おおむね2000〜3000円程度でモデムが実装できることを狙っていたが、Cat.M1はCat.0の半額、量産価格で1000円以下がターゲットとなっている。数百円オーダーのCat.NB1よりは高価格であるが、1000円以下なら許容される、と判断したようだ。
ちなみに利用する周波数は、Cat.NB1と異なり、LTEの送受信帯の一部を利用する形で、LTEのガードバンドや専用周波数はサポート外となる。ちなみにLTEの周波数帯の「どこ」を利用して通信するかは動的に変更できる仕組みが用意されている。このため、基地局側としては同時に複数のCat.M1の端末に対して送受信を行うことも可能である。
もっとも、帯域を1.08MHzに絞ったが故に、Release 12までのLTEの仕組みでは、Cat.M1の通信がそもそもできないという問題もある。これは、LTEの中で、SIB(System Information Block)などの制御情報を受信するためのPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)の受信に1.08MHz以上の周波数帯域が必要なためだ。そこでRelease 13からはあたらしくCat.M1向けにMTC-PDCCH(Machine Type Communication PDCCH)と呼ばれる制御チャネルと、Cat.M1向けのSIBが新たに制定された。
このため基地局の側がこれに対応しないとCat.M1は利用できないことになる。ただしこれは、Cat.NB1も同じ話であって、これを受けて各社基地局側の改修というかバージョンアップを行っているので、大きな問題にはならないとは思われるが、既存のLTE網がそのまま利用できるわけではないことだけは注意されたい。
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