スイスのABBは、IoTに人とサービスの要素を加えた「IoTSP」を推進。協働ロボット「YuMi」の展開なども組み合わせ「未来の工場」実現に向けたソリューションを展開する。
2017年1月18〜20日に開催された「第1回 ロボデックス」(東京ビッグサイト)の産業用ロボットフォーラム基調講演にABB(日本)副社長の吉田剛氏が登壇。「ABBが実現するIoTSPの世界−未来の工場へ−」をテーマに同社のロボティクス事業をはじめ「IoTSP」のコンセプト、さらに協働ロボット「YuMi(ユーミィ)」の展開を含む未来の工場に向けての取り組みなどを紹介した。
ABBはスイス・チューリッヒに本社がある電力とオートメーションの世界的企業だ。スウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが1988年に合併して生まれた。従業員数約13万5000人で売上高約4兆円、世界100カ国に拠点を構えている。主な取引先は電力(再生可能エネルギー、グリッドオートメーション、マイクログリッド)、一般産業(工場、プラント関連)、交通およびインフラ(船舶、電気自動車、電車、ビルディング)などの産業である。
同社は4つの事業本部で構成され、吉田氏は日本で「ロボティクス&モーション」という事業本部を担当している。その事業本部の中に「ロボティクス」というビジネスユニットがあり、ロボットなどを扱う。
同社の125年の歴史について吉田氏は「イノベーションの歴史といってもいい。100年前にサーキットブレーカーを開発するなど世界初の製品を世に送り出してきた。ロボットでは1974年世界で初めて産業用ロボットを製造した会社の1つとなっている」と紹介した。日本進出も110年を超える歴史があり、最近では2015年に日立製作所と合弁会社、日立ABBHVDCテクノローズを設けている。
グローバルのロボティクス事業はロボット総合ソリューション、システムエンジニアリング、カスタマーサービスを3本の柱に事業を展開する。世界でのロボット稼働台数が150万台(国際ロボット連盟による)とされる中で、自動車、食品、薬品などの業種向けに、2016年時点で同社の累計販売台数は30万台に達している。なお、日本国内では塗装機の世界市場向け開発製造拠点であるテクニカルセンター(静岡県島田市)やアプリケーションワークショップ(東京都多摩市)を置く。
そのABBが現在推進しているのがデジタル領域への取り組みだ。「当社の顧客の産業分野には2つの大きな流れがある。1つが再生可能エネルギー、蓄電、マイクログリッド、電気自動車などがけん引するエネルギー革命である。そして、もう一つはインダストリー4.0に流れに伴う第4次産業革命である。これらの変革に対応するためにデジタライゼーションを推進している」と吉田氏はその狙いを述べた。
実際ABBの売上高4兆円のうち55%以上はソフトウェアまたはデジタル接続可能な機器類が占めるなどデジタル領域で実績を伸ばし始めている。
さらにABBではデジタル領域の競争力を高めるため、保守、運用、制御などのデータが集まるコントロールルームでの優位性を確保する取り組みを強化している。ここで、登場するのが「IoTSP」(Internet of Things,People and Services)というコンセプトだ。「コントロールルームのオペレータに代表されるように、IoTが進んでも人の重要性は変わらない。また、サービスの必要性もさらに増すと予想される中で、インターネットを通して人とサービス、モノを接続するというこの考え方を提唱している」(吉田氏)という。既にIoTSPによってデータ分析の品質や安全性や信頼性、生産性の向上などで評価が高まった導入事例も既にみられているという。
同社ではデジタル領域へのシフトを内外から加速するために「ABB Ability」というブランド名の全領域を網羅する共通デジタルプラットフォームとソリューションを用意し、提供する方針だ。この中では米国マイクロソフトとの協業も発表しており、ABBとして一貫性のある世界最大級の産業向けクラウドプラットフォームを構築することを目指している。
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