東北大学は、片方の親の遺伝子の性質だけが子に現れるメンデルの「優性の法則」において、優劣関係を決定する仕組みを解明した。有用な遺伝子を働かせ、有害な遺伝子の働きを抑える技術への応用が期待される。
東北大学は2016年12月26日、片方の親の遺伝子の性質だけが子に現れるメンデルの「優性の法則」において、優劣関係を決定する具体的な仕組みを解明したことを発表した。同大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授らの研究グループによるもので、成果は同月22日(英現地時間)、英科学誌「Nature Plants」電子版に掲載された。
劣性遺伝子は、その機能を失っていることから、性質が現れないとこれまで一般的に考えられてきた。今回同研究グループでは、在来ナタネを用いて、花粉の表面に付着する小型タンパク質「SP11」遺伝子を調査した。その結果、発現する側の優性遺伝子から作られる小さな分子(低分子RNA)が、劣性遺伝子の働きを阻害するという、これまでの説とは異なった仕組みを発見した。
さらに、この低分子RNAを構成する核酸塩基の配列が変化することで、特定の遺伝子同士で複雑な優劣関係が決定することも明らかにした。
遺伝子に優劣関係が生じる原因については、約100年前にイギリスの遺伝学者が優劣関係を制御する因子が進化する可能性を提唱していた。今回明らかになった低分子RNAは、その因子そのものであり、過去の仮説を立証するものといえる。遺伝子が低分子RNAを獲得して、優性遺伝子となる過程も明らかになった。
同成果を応用することで、遺伝子の働きを調節することが可能になるという。有用な遺伝子を働かせたり、反対に有害な遺伝子の働きを抑えるなど、植物育種技術としての応用が期待できるとしている。
なお同研究は、農業・食品産業技術総合研究機構、奈良先端科学技術大学院大学、大阪教育大学、神戸大学、東京大学大学院農学生命科学研究科との共同研究で行われた。
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