一部車種で搭載が始まった高速道路での自動運転に対し、自動ブレーキは軽自動車も含めて幅広いセグメントで普及する段階を進んでいる。車両だけでなく、歩行者に対してもブレーキを自動で作動させ、衝突被害を軽減もしくは衝突を回避する機能がスタンダードになりつつある。
2016年は自動車アセスメントで歩行者の検知と衝突回避に焦点が当てられた1年だった。国土交通省が同年に実施した対歩行者の自動ブレーキを対象とした評価試験では、マツダの「アクセラ」が25点満点中24.5点という高得点を獲得した。マツダは歩行者検知を単眼カメラで行う。
ステレオカメラを使う富士重工業の「EyeSight(アイサイト)」やスズキの「デュアルカメラブレーキサポート」、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせたトヨタ自動車の「Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス) P」やホンダの「ホンダセンシング」が評価試験の対象となった。試験を受けた5社11モデル全てが総合評価で「ASV++(最高ランク)」を獲得している。
より多くの予防安全機能を搭載するため、使用するセンサーを見直した自動車メーカーもある。ダイハツ工業は単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせからステレオカメラに変更し、対歩行者の自動ブレーキと自動ハイビームに対応した。「単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせでは歩行者対応の自動ブレーキが困難だった」(ダイハツ工業の技術者)のが理由だ。
一方、スズキはステレオカメラから、レーザーレーダーと単眼カメラの組み合わせに変更した。現状でスズキが採用しているステレオカメラでは自動ハイビームの実現が難しかったという。
2018年には欧州の予防安全アセスメント「Euro-NCAP」の試験基準に夜間の歩行者検知と衝突回避、自転車の検知と衝突回避が加わる。検知対象や検知すべき環境が多様になるため、イメージセンサーや検出アルゴリズムの進化も進む。自動ブレーキは搭載していて当たり前となり、何をどこまで検知できるかが消費者の関心となりそうだ。
これまでの自動ブレーキは、進行方向にいる車両や歩行者、障害物を検知して、衝突を回避するために制動する機能だった。今後は、ブレーキの作動だけでは衝突を回避できない場合にステアリングを自動制御して避ける発展形や、交差点での右直事故防止にも機能が広がりそうだ。
ステアリングの自動制御で歩行者との衝突を回避する技術は、トヨタ自動車がレクサスブランドのフラッグシップセダン「LS」の新モデルに搭載する。「北米国際自動車ショー2017」(一般公開日:2017年1月14〜22日、米国ミシガン州デトロイト)で発表した。三菱電機などのサプライヤも止まらずに曲がる衝突回避に向けた制御技術を開発中だ。
新型LSは、交差点の右直事故(右側通行の場合は左直事故)にも対応した衝突回避支援システムを搭載する。Volvo Carsは既に、SUVの「XC90」に右折する際に直進車両を検知して作動する自動ブレーキを搭載している。
無人運転につながる技術、自動駐車も2017年から普及や実用化に向けた動きが活発になりそうだ。ドライバーがクルマを降り、車外から遠隔操作して駐車する機能が日本に初めて導入されたのは、2016年5月発売のBMW「7シリーズ」だ。テスラもソフトウェアのバージョンアップで遠隔操作による自動駐車機能を追加した。
7シリーズの「リモート パーキング」は、並列駐車のスペースに向けてクルマを停止した後、ドライバーがクルマを降りて車外から操作することで自動で前進、後退して駐車することができる。後退は直進のみで、前進時もステアリングを微調整するが基本的には真っすぐ進むだけだ。自動駐車の操作はディスプレイ付きのリモートキー「ディスプレイ・キー」で行い、エンジンのオンオフもキーで完結する。
ビー・エム・ダブリューの認証部門は、リモート パーキング搭載車の日本発売にあたって2012年から国土交通省から調整を重ねてきた。リモート パーキングは無人運転となる新機能のため国土交通省に技術指針がなく、7シリーズ向けに指針を新たに策定。販売の認可そのものは2015年10月に下りていた。
日本政府は2020年以降、無人運転による自動駐車(バレーパーキング)向けに、専用の駐車場を実現する目標だ。これに向けて、2017年度内にも実証実験を開始し、バレーパーキングの効果や社会受容性を検討する。
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