これらの体制強化に加えて新たに設立したAGでの活動も既にいくつかが実を結び始めている。「国際標準化AG」では、第1回の日独会合をビデオ会議により2016年9月29日に実施。さらに2016年10月6〜7日にドイツのベルリンで開催されたG20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)のプレカンファレンスでそれぞれの専門家が対面して、議論を行ったとしている。
ドイツ側の「プラットフォーム インダストリー4.0」の標準WGにも日立製作所や三菱電機が参加しており、相互に連携しながら最適な標準化の形を模索していく。「標準化においては、ガラパゴス(日本市場だけの独自進化となり世界基準から離れてしまうこと)となってはいけない。関係国と議論を深めていくことが重要だ」と糟谷氏は述べている。
「中堅中小企業支援AG」では、幅広い中小製造業のIoT活用支援を推進。日本もドイツも製造業のバリューチェーンの重要な要素を中堅中小企業が握っており、これらの企業のIoT活用は、インダストリー4.0の世界を実現するのに必須となる。粕谷氏は「中小企業支援は、日本でもドイツでも重要なポイントだと見られている。中小企業が第4次産業革命の波に乗ることが重要だ」とその価値を強調する。
具体的な活動としては、日独間で中小企業同士の交流を推進。2017年初頭にドイツの中小企業を日本に招く一方、2017年3月にドイツのハノーバーで開催される国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」において日本の中小企業をドイツに派遣する計画を示している。「CeBIT 2017」は日本がパートナーカントリーを努めることが決まり、同期間において、安倍首相とメルケル首相の首脳会談なども計画されている※)。
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さらに中小企業支援に向けては、中小製造業のIT化の支援を行うとともに、製造現場においてIoTをどう活用すべきかという支援を行う「スマートものづくり応援隊」の始動を準備している。同応援隊の活動の拠点として、さいたま市産業創造財団(さいたま市)、大阪商工会議所(大阪市)、山形大学(山形市)、北九州商工会議所(福岡県北九州市)、ソフトピアジャパン(岐阜県大垣市)の5つの拠点を選定。同拠点を中心に支援の輪を広げていく方針だ。「今後はさらに拠点数を増やしていきたい」(糟谷氏)。
さらに、同拠点などで活用可能な中小企業向けのIoTツールを公募。2016年10月4日に公募で選定された106ツールを公開している※)。スマートフォンやボードコンピュータ「Raspberry Pi」など汎用のコンシューマー向け機器をうまく活用し、低価格で負担の小さいツールが数多く紹介されており、投資規模が小さくなりがちな中小企業のIoT活用を促進していく。
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サイバーセキュリティについても、CEATEC JAPANの開催期間中に第1回の日独専門家会議が開催されたという。
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