その会社には、主に以下のような内容についてお話しました。
ルールは、以下について考えました。
「CAD/CAM連携を目標に協力してもらえませんか? その仕組みは当社のためだけではなく、他社にも適用していただいても結構です」
と私が持ちかけると、その答えは、
「内容は理解できました。では、CAD/CAMを買って支給してください」
ということでした。
この答えに当時の私が落胆したことは言うまでもありませんが、3D CAD推進者として駆け出しだった私の考えがいかに浅かったか、反省させられます。
これは後から知った話なのですが、実はこの会社、私が相談を持ち掛ける前に、「今後はCAD/CAM連携を行うので、それに対応できる設備を持たないと発注できなくなりますね」と大手の発注元より言われていたそうです。それに従って、CAD/CAM連携に対応できる設備を導入したものの、その後は投資に見合うだけの注文がなく、維持管理コストが問題となり、CAD/CAMのバージョンアップができなくなってしまった状態だったということです。
グループ企業のように注文元と強固な関係にある会社であれば、相手先にCAD/CAMを支給することも可能かもしれません。しかし五月雨式の生産で、安定的な部品供給を約束できない一発注元のような会社にとって、その支援は非常に難しいものです。
その後、自社に戻って状況報告をし、支援のための資金を引き出すべく説得もしましたが、当時の私には話を上まで通す力はありませんでした。
ただ、そのようなことはあっても、その後も私は諦めることはなく、数社に声を掛けていき、2社について試作の段階まで持ち込むことができたのです。しかし、次のような結果になってしまいました。
小規模な部品加工会社でCAD/CAM加工に対応する会社は、大抵、先進的な会社で、人気もあります。先ほどお話したように、技術力という付加価値や設備費用を乗せるため、加工費が上がる傾向にあります。一方、汎用機での加工が中心の会社では、機械の減価償却が終了していることも多く、加工費も安く抑えられます。その取り組みによって、部品調達部門視点で納得のいくコストメリットが生めなかったのは事実でした。
さらに恒久的な運用となると、次のような意見もありました。
これまでも3D CAD推進は全体最適のツールであり、部分最適の積み重ねでもあるというお話をさせていただいていますが、既存の社内の仕組みをどう考えるのか、どう変えるのかということを考えなければなりません。
私自身、決してそれを軽んじていたわけではなかったのですが、理想的な要素を取り入れようとする一方で、既存の社内の流れの仕組みでの中で業務を遂行せざるを得なかったという事情がありました。また、これらの活動は「一部門の負荷」としか評価されませんでした。
結果、試作という形でしかCAD/CAM連携を行うことが出来ず、最終的にはこの取り組みはこれ以上進むことはありませんでした。今から10年くらい前の話ですから、着手する時期が少し早かったのかもしれません。ですが今現在も、個別受注生産型の機械設備産業がおかれている状況に大きな変化はありません。
大企業の3Dデータの活用は「上手くいっている」とよくいわれます。しかし、発注元の仕組みや一方的な要求を加工会社に押し付けるようなデジタルエンジニアリング推進活動を進めていくことは難しいのではないでしょうか。
中小規模で個別受注生産型の企業においては、理想的なCAD/CAM連携が出来るようになるには、もう数年くらいはかかるのではないかと私は考えています。
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