加速するスマート工場、DMG森精機はパートナーにマイクロソフトを選ぶスマートファクトリー(2/3 ページ)

» 2016年09月12日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

セキュリティの問題が提携のきっかけ

 工作機械をIoT化し、インターネットを通じて情報を授受できるようにすれば、最先端の機能などを常にソフトウェアバージョンアップなどにより使用できるようになる利点がある。さらに、他の機器と情報連携し自律的に生産を最適化するようなことが可能となる。インダストリー4.0などのスマートファクトリーはこうした自律的な生産工場を目指しているわけだが、その一方でインターネットを含むネットワーク化を進めると、当然外部からの侵入や情報漏えい、改ざんなどの脅威が生まれることになる。

photo 工作機械を取り巻くインタフェース(クリックで拡大)出典:DMG森精機

 こうした脅威から製品を守るために提携先を模索する中で、日本マイクロソフトと協業することになったという。DMG森精機の森氏は、日本マイクロソフトと技術提携する理由として「IT業界での老舗企業であり、グローバルで展開している。さらにコンシューマー向け製品からB2Bまで幅の広い製品やサービスを抱えることで、DMG森精機が抱える幅の広い顧客にあった製品やサービスのプラットフォーム開発に合うと考えた」と理由について述べている。

photo DMG森精機の工作機械の顧客の幅広さ。中小企業から大企業まで顧客を抱える他、1980年代に納入した機器がまだ使われているケースもある(クリックで拡大)出典:DMG森精機

IoTプラットフォーム構築に貢献

 技術提携について日本マイクロソフト 執行役 会長の樋口泰行氏は「制御システムにおけるセキュリティの領域と、スマートファクトリーにおけるプラットフォームの領域についてマイクロソフトが担っていくことになる。ソフトウェアの価値が拡大する中、さまざまなものがデジタル化していき、クラウドやデータ解析などによる付加価値が大きな影響度を持つようになった。こうした価値を拡大していくのがわれわれの役割だ」と述べている。

photo 協業における日本マイクロソフトの役割(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト
photo 成功のひな型づくりが重要であると主張する樋口氏

 スマートファクトリー実現に貢献する技術についてはIoTプラットフォームである「Azure IoT suite」などがある他、インダストリー4.0で推奨規格となっている通信プロトコル「OPC UA」などの標準規格、クラウド技術や機械学習などを含む分析技術、年間1000億円近い投資を進めているセキュリティおよびWindowsシリーズなどを挙げている。さらに「HoloLens(ホロレンズ)」のようなVR(仮想現実感)関連技術なども協業の領域内に入っているという。

 具体的な協業への取り組みとして挙がっているのは以下の通りである。

  • セキュリティに関連した取り組み
  • CELOS(工作機械コンソール)などWindowsを利用した製品のセキュリティ
  • センサー情報などをクラウドへ集約するための安全なデータ転送
  • クラウドにおけるデータの取り扱い
  • クラウドにおける運用と応用分野の検討
  • 集約したデータ分析に基づいた予防保全などのプロアクティブな活用
  • 新規ビジネスモデルの構築に向けた技術的な検討
  • 先端のIT技術の活用
  • 機械操作員の安全のためのデータ活用
  • VR(仮想現実)/ウェアラブルデバイスなどによる機械操作員の作業効率の向上

 今回の提携はDMG森精機と日本マイクロソフトとの間のモノであるが、こうした技術開発については、米国マイクロソフトのR&D部門と連携を取りながら進めていくとしている。

photo ホロレンズの活用イメージ(クリックで拡大)出典:日本マイクロソフト

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