当たり前のように行われている部門間でのドキュメントのバケツリレー、人手による書き直しと受け渡しの際のデータ変換だが、以下の問題の原因となっている。
ドキュメントは、川上部門から川下部門へシーケンシャルに流れていく。川下部門は、つねに前工程のドキュメントの完成と到着を待っている。従って、前工程の遅れがそのまま後工程の遅れになっていく。
問題は、各部門は自分たちの成果物には責任を持つが、川下部門への配給、通知、共有についてはあまり責任意識や当事者意識を持っていないことだ。これが川下部門の生産性や品質に悪い影響を与える。皮肉なことに、後工程を担う部門ほど市場や顧客との距離が近いのだが、そこに組織全体のひずみが堆積し表面化することになる。
川上部門からのドキュメントを転記や再編集することで、川下部門のドキュメントが制作される。人手に頼る制作スタイルは、理解不足や読み違いによる記載ミス、記載漏れの可能性を残す。従って、川上部門のチェック作業が不可避になる。これは双方にとって負担である。
さらに川上部門の情報の誤りやアップデートを川下部門に伝えることも当事者に依存しているので、伝達忘れや修正漏れが発生し得る。
部門間のソフトウェアツールが異なるため、人手による内容の書き直し、データ形式変換の繰り返しを余儀なくされている。これが組織全体の効率を阻害する。
こうした課題を解決するためには、反対のことを行えばよい。すなわち、
ことだ。
一言でいえば、コンテンツのリソースを部門間で共有し、そのリソースから自部門の文書コンテンツをシステム的に自動生成させる仕組みに移行するのだ。この仕組みを「ダイナミック・ドキュメンテーション」と称することにしよう。
ダイナミック・ドキュメンテーションでは、部門間でシェアされるべき情報はドキュメントに固着された状態ではなく、検索抽出が可能なデータベースの状態であることが前提である。一方、そのデータを取り込んでシステム的にドキュメントを生成するために、データとドキュメントを一元的に扱うことができる形式、すなわちDITAのようなXML形式で制作することが必須である。川上部門のリソースから抽出したデータにXMLタグを付加することでドキュメントに変容できるからである。
さらにDITAはグローバルなオープンスタンダードである。ソフトウェアツールやそのベンダーのしがらみに左右されないので、永続性、流通性が高く、情報を企業資産にするにふさわしい形式といえる。
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