小さな子どもに「IoT」を尋ねられて、分かるように教えることができますか?また、「組み込み機器」を聞いたことがないひとに「ARM」を教えることができますか?
夏のひそかな楽しみといえば、NHKラジオ第1で放送している「夏休み 子ども科学電話相談」です。子どもの疑問に専門家が直接、電話で答えていく夏の長寿番組で、電子書籍を含む書籍化もされています。
「朝顔はなぜ、朝に咲くの?」「マグロは泳ぐのをやめたら死んじゃうって本当?」「宇宙はどうしてできたんですか?」などなど、子どもからの疑問へ専門家が答えていくのですが、時には3歳や4歳の子どもからも質問が寄せられるため、専門家が「小さな子どもにも伝わるよう、分かるように答える」事に四苦八苦している様子が伺えます。
番組に登場する専門家はあくまでも専門家として、科学的な知見に基づいた説明を行います。ただ、小さな子どもに科学的な知識は乏しいため、専門家は慎重に言葉を選び、時折、「知っているかな?」と確認しながら説明を続けます(その反動か「恐竜好き中学生」のような説明しがいのある質問者には本気を出す場面もあり、勢いづく様を聞くのもリスナーとしては楽しみの1つです)。
新しいことを説明するとき、説明したいことの周辺領域に関する知識や経験を持つ人へ話すことはさほど困難ではありません。それは前提条件の設定が容易だからです。「AはBの発展系である」という話をしたいとき、Bによく知られている存在を当てはめれば良いからです。ですが、Bに相当する存在が見つからないとき、説明という行為は途端に難易度が上がります。場合によっては、前提条件の設定を誤ったため、説明が要領を得ないということ結果にもなりかねません。
この要領を得ない説明が各所に散見されたのが、先のソフトバンクによるARM買収でしょう。
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