Aさんは、装置設計会社に勤務する設計者。設計ツールを「“いま時の”3D CADに変更しよう」と、ノンヒストリー3D CAD「●●」を採用したところ、上手く立ち上がらずに悩んでいます。
そんな中、何かのヒントを得ようとCADベンダーのカンファレンスに参加したところ、他社に勤める大学の先輩・Bさんに出会いました。Bさんは、ヒストリー3D CAD「○○」のユーザーで、CADの導入支援もしています。Aさんは、Bさんに自分の悩みを相談します。
Aさん 3年前に3D CADを導入したのですが、うまく立ち上がらなくて、悩んでいるんですよね。
Bさん 3D CADは何を使っているの?
Aさん 2Dからすぐ移行できるということと、“とにかく軽い”っていうことで、●●を購入しました。
Bさん ●●は使ったことがないので(*1)詳しいことは分からないけど、確かに軽いことと、2Dからの移行には適しているっていわれているよ。でも、●●は、自分が使っている○○のようにモデリングの履歴や拘束条件も持たないよね? だから“軽い”といわれているんじゃない?(*2)
Aさん そういえば、Bさんのところは○○でしたね。私の会社では生産ラインを全表示させたい時があるので、大規模アセンブリの表示をすることがあるんです(*3)。○○は大規模アセンブリを表示しようとすると「動作が重い」って聞きましたよ。どうなんですか。
Bさん 確かに大規模アセンブリの再表示速度は遅いけど、最近はデータロードと表示の工夫もされて、再表示速度も速くなったんだ。
Aさん へえ、そうなんですか。
Bさん ところで、履歴を持たない3D CADって使いにくいと思うなぁ。アセンブリの拘束もないから、アセンブリを作りにくいと思うけど。パーツもアセンブリも設計者の設計意図を履歴として残しながら、モデリングする方が良いと思わない?(*4)
Aさん 詳細設計で頻繁に形状を変形させるような場合は、履歴を持っていると形状も変形させやすくて便利かもしれません。ノンヒストリーでは描き直しになります。うーん、○○の方が良いのかなぁ……。
さらに、Bさんは、○○がビュワー、設計最適化のオプション、CAE、PDM、ドキュメント作成オプションなどなど、3D CADのデータを展開できることを強調します。
――こんな話があったとしたら、何だかヒストリーCADの方が良く思えてしまうかもしれません。でも、こんな会話、耳にしたことはないでしょうか?
そんな単純な話や結果になることはないとは思いますが、これを機にAさんが、会社の3D CADをヒストリーCADに入れ替えてしまったとしたら、残念な結果になるだけではないでしょうか。なぜかと言うと、3D CADの立ち上がらなかった理由の議論がツール論に終始してしまっており、根本原因を把握できていないからです。
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