―― お話を伺っていると、電動アシスト自転車の市場って、実に繊細なニーズのくみ上げでできあがっていることが分かります。そんな中、ロードバイクタイプのYPJ-Rが登場するわけですが。これはもう見ただけで明らかにコンセプトが違う。企画時にはそうとう揉めたんじゃないかと思うんですが、どういういきさつでこれを製品化することになったんでしょう。
鹿嶋 2012〜2013年がちょうどPASの発売から20周年に当たりまして、これまでの振り返りの冊子なんかも作ったんです。片方で顧客分析していくと、PASのニーズは固定化されてきている。安定成長事業ではあるんですけど、こういうニーズにずっと頼りきりでいいのかという課題認識もありました。
何か新しい提案ができないかということで、事業部の中で企画のコンペをやろうということになりました。次の20年を担う新しい電動アシスト自転車というテーマで、2チームでそれぞれ企画を立てたんですが、そのうちの片方がこの商品につながる「YPJ-01」でした。まずは形とコンセプトを提示して、可能性があるかどうか探ってみようということで、2013年の「東京モーターショー」に出展したんです。
―― 電動アシストと言えばお年寄りかママが使うものですから、完全に実用品ですよね。一方こういったロードバイク型となると、利用の目的も違ってきます。
鹿嶋 これまでの電動アシストって、もともと自転車の弱点を補うコンセプトなんですよね。弱点を補う代わりに部品がついて重たくなって、自転車と同じように走ろうとすると、アシストOFFでは厳しい。これは足し算の発想でできた商品だったわけです。
自転車としてはこれで失っている部分もあるので、もう一回引き算の考え方を入れて、「乗って便利」から「乗って楽しい」を提案しようと。クロスバイクタイプは既に製品があるんですが、これに乗って期待と現実のギャップに悩んでる方の1つの答えにもなるし、今までの電動アシスト自転車では食指が動かないと言う方に対しても、これだったらいかがですかという提案ができるんじゃないかと。
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